士郎くんの足跡(後)
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するセイバーをよそに、士郎は呆然自失しているイリヤの肩を揺すった。
『イリヤ、おい、イリヤ。無事か?』
『……え? お兄、ちゃん……?』
『ああ。とにかく、今は此処を出よう』
士郎は一度は己を死のふちに落としたイリヤを欠片も恐れず、躊躇う事なく背負った。
されるがままだったイリヤは、なんで、と掠れた声で問い掛ける。
『決まってる。妹――じゃないか。姉を助けない弟なんていないだろ?』
『……』
恐る恐る、首に腕を回してきて、しがみつくイリヤに笑い、士郎は元気つけるように明るい声で話し掛け続けた。切嗣の事、自分の事、イリヤの事。旨い食べ物、今夜の夕食――次第に小さな相槌が返されるようになると、士郎はますます張り切って語り掛ける。
それに、凛は呆れたようだ。
『……はあ。アイツ、よくあんなふうに出来るわね。一度は殺し掛けられた奴なのに』
『衛宮は子供に好かれる奴だからな。ガキをあやすのはお手のものなんだろうぜ』
『っ、間桐君?』
『地、出てるぜ。普段猫被ってやがったな』
慎二が失笑しながら凛に云うと、露骨に顔を顰めた凛は慎二を無視した。
そんなやり取りと士郎の様子を、カルデアと冬木のアーチャーは複雑そうに見ている。こんな事があるとは……その心境は冬木の己とも被るだろうとエミヤは確信していた。
やがて士郎は、イリヤを衛宮邸に連れ込むと凛や慎二に提案した。お前達もここで住めよ、と。もちろん聖杯戦争中だけだが。
凛は少し考え、承諾した。聖杯戦争中は、キャスターを警戒して単独で行動しない方がいいと判断されたのだ。
無論、大河は無理だが桜は暫く衛宮邸に来ないように、慎二の口から要請させる。慎二の邪険で横柄な態度に、しかし桜は嬉しそうだったのが印象に残った。兄さんが先輩とまた、仲良くなれてるのが嬉しくて――士郎が機嫌がよさげな理由を問うと、桜はそう言った。慎二は鼻を鳴らして取り合わなかったが……否定はしなかった。
束の間の平穏が過ぎる。
イリヤスフィールの容態が芳しくない。イリヤスフィールは自身を小聖杯だと告白し、脱落したサーヴァントの魂を回収する器なのだと言った。既に三騎――イリヤスフィールの知らない、恐らくは前回のアーチャーが脱落している為に、殆ど動けなくなっている。
三騎脱落しているのに、負荷は五騎のそれと同等だという。イリヤスフィールは息も絶え絶えに警告した。
『あのキャスター、わたしの令呪に干渉したわ。魔力は相応に使うみたいだけど、今度会えば令呪でリンやお兄ちゃんのサーヴァントは、自害させられる。それを抜きにしても桁外れに強かった』
バーサーカーの真名は、ヘラクレスだったという。その宝具を士郎達に伝え、一度の自害では滅びなかったヘラクレスを、キャス
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