士郎くんの足跡(後)
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らば、三騎掛かりでも返り討ちにされる畏れが多大にある。
明らかに不吉な予感のする記憶映像の中、よくもそんな軽口を叩けるものだと感心すらしかけてしまう。
ランサーの協力は得られず、また倒す事も出来なかった。何故教会付近にいたのかを考えてみても、特に理由は思い浮かばない。教会から出てきた言峰綺礼は、こんなところで戦う者がいるとはと嫌味を言い、凛を弄って笑みを浮かべていた。
士郎が言う。イリヤスフィールに会いに行こうと。避けては通れない道だ。必ず会わねばならない。なら時間を置くよりも先に、こちらから会いに行く方がいい――そう思い、凛の案内でアインツベルンの城へ向かった。
鬱蒼とした森の中を進む。凛の顔が強張っていた。
『――結界が、ないわね』
本来なら自身の領域に踏み込んだ者を報せる警報、罠の類いがなかったのだ。不自然なほど何もない。進んでいくと、濃密な魔力の昂りを感じて士郎達は足を早めた。
爆音が轟く。雷鳴が散る。城が崩れるほどの。風が渦巻き嵐となって、時には現実を歪めるほどの幻術の余波が士郎達の行く手を阻んだ。何が、と戦慄する一同を出迎えたのは――またしても、キャスターのサーヴァントだった。
どれほどの激戦が繰り広げられたのか。
頬に赤い血の筋を走らせ、肩で息をするキャスター。
臨戦態勢を取る士郎達の目に、倒れ伏し、消滅していく狂戦士の姿が映る。そしてキャスターのマスターらしき男が、バーサーカーの消滅に絶望するイリヤの腕を掴んでいる――
『イリヤを離せ、テメェ――!!』
怒気を激発させて怒号を発し、士郎が走った。バーサーカーを倒し油断していたのだろう、キャスターのマスターは士郎の接近に気づかず、キャスターにはセイバーとアーチャーが仕掛けた。
矢雨を風を起こして薙ぎ、セイバーが接近するのに短距離を転移で移動して躱すも、キャスターの自身のマスターへの援護は間に合わず、士郎の拳が男の顔面を抉った。
殴り飛ばされた男は思わずイリヤスフィールの手を離していた。不意の打撃に、しかし冷静さを保っていた男は素早く凛の追撃を避ける為に後退する。そのすぐ傍にキャスターが転移で現れた。
『また君達か。それに、一騎増えている』
男は面倒そうに嘆息する。キャスターは視線で主の意向を問うと、男はあっさりと言った。
『仕方ない、撤退する。本当はここで小聖杯を確保しておきたかったのだが……流石に今回は私の方が消耗している。キャスターへの魔力供給が不安だ。不確定な勝負はしない』
『待て! もう一発殴らせろ!』
『セイバーのマスター……真っ直ぐな少年だね。また会おう』
殴られた事を欠片も気にせず、男は士郎へと微笑み、またしても空間転移で撤退していった。
まんまと逃げられた事に歯噛み
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