士郎くんの足跡(中)
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士郎くんの足跡(中)
『問おう――貴方が私のマスターか』
この時を以て、衛宮士郎の運命は確定した。
最早無知な一般人へと戻る事は能わない。彼は戦う事を決意したのではなかった。死にたくないが為に、誰かを死なせたくがない為に、戦わざるをえなかった。
運命は加速する。槍兵を撃退した少女騎士は、新たにやって来た二騎のサーヴァントの気配に、警戒の念も露に迎撃する意思を固めた。事情がてんで呑み込めない士郎はなんとか現実を理解しようとするも、サーヴァントが己の知る使い魔とは結び付かず、聖杯戦争の事など理解の外だった。
正門の前にやって来た赤い外套の騎士を少女騎士は一太刀で斬り伏せる。赤の少女が咄嗟に己のサーヴァントを令呪で霊体化させなければ、ここで脱落していただろう。
『待て!』
士郎は制止する。訳が分からないまま勝手に進む現実の状況、意味不明なまま後戻りできない事態に巻き込まれた事を察していたからこそ事情を理解したかった。
制止された事で不服そうにするセイバー、アルトリア。暗闇から姿を表し、休戦を申し出る遠坂凛。
「リンさん……?」
「……」
『其処にいるのは分かっている、姿を表したらどうだ』
そして、もう一騎のサーヴァントへ、厳しい目を向けるセイバー。暫しの間を開けて、観念したのか目をバイザーで隠した妖艶な美女が物陰から進み出てくる。その後ろには、苦々しく顔を歪める慎二がいた。
『慎二!?』
『……うそ、間桐君じゃない』
『は……衛宮、オマエ……魔術師だったんだな』
酷く傷ついたような、それを隠すような、引き攣った半笑いの表情だ。何かを懸命に堪えるその表情に、士郎は。
『や、違うぞ』
『は?』
『え?』
『え?』
慎二と凛、セイバーはその返しに思わず間の抜けた声を漏らす。
『俺は正義の味方だ』
『……』
『……』
『……なんだそりゃ』
ふ、と慎二は笑った。肩から力が抜ける。ただの馬鹿だと、自分の知る衛宮士郎なのだと、慎二は理解したのだ。こほんと凛が咳払いをする。士郎へ事情を説明する為に、一旦衛宮邸に入る事を提案した。
そこで聖杯戦争に関する説明が行われた。そして士郎は驚き、憤りながらも、あっさりと決断を下す。
『そっか……なら、止めないとな』
『止めるって、何を?』
『決まってるだろ。こんな街中で戦争だなんて間違ってる。無関係な人間を巻き込みかねないってんなら、速攻で終わらせるしかないだろ。聖杯なんか興味もないしな』
興味もない。
万能の願望器に対して、士郎は心の底からどうでもいいと言っていた。嘘がないのは、出会って間もないセイバーにも分かった。
『なあ慎二、遠坂。手を貸せよ。聖杯ならお前らが勝
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