士郎くんの足跡(中)
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いた。辛うじて防戦が成り立っているのはセイバーだけだ。それも、直に捻り潰されて終わる。それほどの猛威。
余りの迫力に、カルデアのイリヤは腰を抜かしていた。影響はないと知っていても、無意識にアルトリアやアタランテ、エミヤも臨戦態勢を取ってしまう。
セイバーが飛び退く。バーサーカーを誘うように教会の墓地へ向かっていった。狂戦士の猛追をまともに受け、セイバーの端整な美貌が歪む。
『クソッ!』
士郎は意を決して駆け出した。衛宮君!? 衛宮!? 凛達の呼び掛けを無視しイリヤに向かって士郎が走る。
イリヤが髪を抜く。魔力が奔り、象るのは巨大な針金細工の剣。飛来するそれを、士郎は辛うじて躱すも完全に避ける事は出来なかった。掠めると左腕が千切れ掛け、鮮血が吹き出た。歯を食い縛り悲鳴を堪え、脚を縺れさせながらも、それでも士郎は走るのをやめなかった。
バーサーカーがセイバーを追っていた足を止め戻ってくる。イリヤスフィールの命令だろう。一瞬にしてイリヤスフィールの眼前に降り立った巨雄が、斧剣を振り上げる。そこに魔力を放出して飛来し、必死に割り込んだのはセイバーだ。
だが、咄嗟の事だった。強烈な死を予感していた故に、士郎はセイバーがサーヴァントである事を忘れた。士郎の本質が、最悪のタイミングで顔を出したのだ。
『なっ――!?』
士郎が、セイバーを突き飛ばした。思わぬ事にセイバーはたたらを踏み、そして――斧剣が、士郎の体を引き裂いた。
『え……?』
『衛宮君!?』
士郎が倒れる。即死だった。イリヤスフィールは呆然とした。凛と慎二が駆け寄ろうとし、バーサーカーがそちらを狙おうとするとライダーが二人を肩に抱えて飛び退いた。
セイバーもまた呆然とし、どうして――と、呟く。
出血の映像は途切れている。しかし士郎の体が真っ二つに泣き別れた光景に、イリヤは競り上がる吐瀉を堪えた。美遊もまた口許を覆う。
『……何これ。こんなの……、……つまんない。帰るわよ、バーサーカー』
激発していた癇癪が鳴りを潜める。そうして、あたかも逃げ去るようにしてイリヤスフィールは狂戦士を連れ、その場を立ち去った。
士郎が死んだ。皮一枚で体は繋がっているに過ぎない。だが――映像が暗転する。
場所は衛宮邸に移っていた。体に手を当て、死んだはずだと喘ぐ士郎に、セイバーが言う。士郎はひとりでに再生されたのだと。凛が言うには、セイバーと契約する事で、なんらかの恩恵が得られているのではないかという事だった。
バーサーカーの余りの強さに、今後の事を話し合う。明確な方策は無く、イリヤとは俺が話をつけると士郎は譲らなかった。
士郎は翌日の学校を休んだ。実際に死にかけた事で気分が悪く、顔色が悪かったからか、ひどく心配す
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