士郎くんの足跡(中)
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てくれないって、死ぬ間際まで、死が近づいてる体で、何度も会いに行っても会えなくて、悔しそうにしていた』
『え? 死……? 切嗣……死んじゃってる……の……?』
『ああ。何年も前の事、だけどな』
『……そう……なんだ。切嗣、死んじゃってたんだ……嘘吐き……何回も、会いに来てたって……そんなの、知らない……そんなの、嘘……だって、だっておじいさまは、切嗣は裏切ったって……わたしの事、捨てたって……』
イリヤスフィールはその小さな肩を震わせた。俯いて、表情が髪に隠れる。その譫言に、士郎は言った。
『イリヤ、切嗣はイリヤを捨ててなんかいなかった。最後までイリヤに会いたがっていた。俺はイリヤと仲良くしたい。血は繋がってなくても、兄妹なんだから』
『……うるさい……』
『イリヤ』
『うるさい! 何も聞きたくない! やっちゃえバーサーカー!』
巨人が吼える。両手を広げてイリヤスフィールに語りかけていた士郎を拒んで、イリヤスフィールは悲鳴をあげるように命じていた。
雄叫びを上げて襲い掛かってくるバーサーカーを、セイバーが真っ向から迎撃に向かう。斧剣と不可視の剣が激突した。その余波だけで凄まじい爆風が巻き起こる。ライダーはマスターを狙おうとしたが、しかし士郎を見て、バーサーカーに向かった。
『イリヤ!』
『うるさい、うるさい、うるさい……! 嘘吐き、切嗣はわたしを捨てたんだ――! 皆殺しちゃえ、壊しちゃえ! 狂いなさい、バーサーカーぁあああ!!』
バーサーカーの威が膨れ上がる。ライダーと協力しあい、辛うじて互角に立ち回っていたセイバーとライダーが一瞬で弾き飛ばされた。
剣撃の風切りの衝撃だけで、セイバーの額から血が流れる。
『嘘でしょ!? こんな化け物、どうしろってのよ!?』
凛の驚愕は、二騎のサーヴァントが全く歯が立たない最強のバーサーカーへ向けられていた。
『どうすんだよ、あの筋肉達磨! 想定外もいいとこだろ!? 衛宮、ライダー達が足止めしてる内にさっさと逃げないと……!』
『分かってる! けど後少しだけ、少しだけでいい、イリヤと話させてくれ!』
『話す事なんか、ない!』
予期しなかった死闘が始まる。セイバーは決死の形相でバーサーカーの猛攻を凌いでいた。だが長くは保たないだろう。士郎は歯噛みした。戦いの素人だ。喧嘩の経験なら幾らあっても、あんな天災じみた輩への対処など想像もつかない。
苦し紛れにセイバーへ云う。戦いながらだと、とても苦しい質問だった。
『セイバー! どこか、やり易い所はないか!』
『ッ! ぐ、なら――』
ライダーは近づく事すら出来ない。接近戦は不可能。近づくだけで殺される。敏捷性を活かそうにも、それを超える迅さで叩き潰されるのが目に見えて
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