暁 〜小説投稿サイト〜
人理を守れ、エミヤさん!
士郎くんの足跡(中)
[6/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
るのよ』
『間に合うように、感知を頑張ってくれ、遠坂』
『……頭痛いわ』

 遠坂は頭を抱えた。しかし、敵の仕掛けてくるタイミングをこちらで誘い、厄介なアサシンを仕留められるかもしれないとなれば、一考の余地はある。そして、

『出来ないのか? なら仕方ないな』

 士郎のその挑発に、凛は吼えてしまった。

『出来るわよ! 私を舐めないで!』
『なら問題ないじゃないか』
『あっ……』
『遠坂……オマエ、迂闊過ぎるぞ……』

『凛さんが手玉に取られてますね……』

 カレイドルビーの妹機、サファイアが呟く。滅多に見れないレアな光景だ。
 しかし、美遊は言う。

「でも勝算は立ちます。ならやる価値はある」
「ミユの目がマジな感じ……お兄ちゃん……」

 イリヤは友人の様子に乾いた笑いが漏れ、士郎があくまで平行世界の兄だという事を改めて理解する。だってイリヤの義兄はここまでアレな感じではないからだ。

 しかし、長閑な帰路の作戦会議は、そこで中断された。進行方向に、この世界のイリヤが現れたのだ。立ち止まった一行が身構え、セイバーは凛から借りた中学時代のセーラー服から騎士甲冑に戻った。
 わたし……? イリヤの呟きは途切れる。背後に鉛色の巨人を従えていたからだ。それは、イリヤ達にとって最強の敵だったモノ――黒化英雄のヘラクレスよりも、数倍もの威圧感を放つ存在。その圧倒的な武威、佇まいだけで気圧される。この世界の英霊とは、こんな化け物みたいなのばかりなのか。

『――はじめまして、ね。お兄ちゃん』
『バーサーカー……やば、アイツ、桁外れよ』
『わたしはイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって言えば分かるかしら、リン』
『イリヤ……?』

 スカートの裾を摘まみ、優雅に礼を示す少女の名乗りに、士郎は鸚鵡返しに呟く。
 少年は覚えていた。忘れるわけがなかった。何故ならその名は、彼にとって決して忘れられるものではなかったから。お兄ちゃんと呼ばれるのではない、年下の幼い少女にしか見えない彼女は、士郎の目標にも含まれているのだから。

『? お兄ちゃん、わたしの事知ってるの?』
『……』
『……おい、衛宮。知り合いか?』
『……いや、はじめて会った。ただ、俺の養父、切嗣から聞いた事はある』
『っ……!』

 余裕に満ちていた少女の顔が、一気に強張る。そして剣呑に士郎を睨み付けた。

『大事な娘だって。もし会えたら、仲良くしてくれって、言っていた』
『っ……なん、ですって? 大事な、娘……? そんな事、よくも……! よくもそんな事が言えるわ! 許さない……やっちゃえ、バ――』
『切嗣は、何回もイリヤに会いに行った』
『――!?』
『けど、妻の家――イリヤの家か? それが会わせ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ