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人理を守れ、エミヤさん!
士郎くんの足跡(中)
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手にしていい。ああ、セイバーも聖杯要るんだっけか。なら戦いが終わった後にお前らで話し合って、聖杯を誰の物にするか決めればいい。その後に聖杯を壊せば万事解決だ』
『……あの、衛宮君? これ、バトルロワイヤルだって言わなかったかしら?』

 慎二は呆気に取られ、口を半開きにしている。凛がこめかみを揉みながら言うと、士郎は露骨に嘆息した。

『なんだ。遠坂、聖杯なんかが欲しいのか?』
『要らないわよ。遠坂として勝ちに来ただけだしね、私』
『は……!?』
『ならいいだろ? どこかの誰かが勝手に決めたルールなんか無視だ無視。要は勝てばいいんだ。それにこういうのって、ルール違反はばれなきゃ犯罪じゃない』
『正義の味方の発言じゃないわよ、それ……』

 凛はもう呆れるやら笑えるやら、微妙な顔をしていた。しかし、本来なら突っぱねる提案を、凛は受け入れかけている。それは士郎の不思議な雰囲気に絆されてのものだった。
 彼は全く嘘を吐いていない。それに予感があるのだ。コイツは敵に回したら厄介だ、という。天才的な魔術師である凛が、素人に毛が生えた程度の未熟な魔術使いに対して、本能的な警戒心を抱かせたのである。

『慎二は?』
『あ、いや……僕は……あ……ふ、ふん! オマエなんかに教える義理はないな!』
『そうか? どうせそのワカメヘアーをどうにかしたいってだけだろ』
『なんでだよ!? なんでそうなる!? あと誰がワカメヘアーだ!』
『で、セイバーは聖杯がほしい。俺は要らない。戦いを他人に被害が出ない内に終わらせたいだけだ。遠坂が勝てばいい、聖杯はセイバーが掴めばいい、慎二はワックスを買えばいい。これで万事解決だ。七騎で争う戦争だってんなら、三騎が組めば最強の陣営の出来上がりじゃないか?』
『勝手に決めるな、馬鹿衛宮!』
『勝手に決めるな? すまん、ワックスの種類はちゃんと慎二が決めていい――』
『そっちじゃねぇよ! ああもう……!』

 頭を掻き毟り、しかし不意に慎二は深々と嘆息した。そしてもう、笑うしかないといった風に、心底可笑しそうに笑った。
 妖艶な美女――ライダーは、ぽかんとして士郎を見ている。そして憑き物が落ちたような表情の慎二を、呆気に取られて士郎と見比べた。

『そういえば、その、ライダーだっけ? それと遠坂の――』
『アーチャーよ』
『そのアーチャーな。お前達は何か、聖杯に託す願いはないのか? ないならこれで決めちまうけど』
『勝手ですね……』

 ライダーが口を開く。その呟きに、士郎は悪戯好きの少年のように口許を緩める。

『勝手に始まって、勝手に他人を巻き込むような儀式なら、俺が勝手しちゃいけないってルールはないだろ。あっても「勝手に決めるな」で押し通せばいい。咎められたら面倒だから、表立っては違
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