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人理を守れ、エミヤさん!
士郎くんの足跡(前)
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な。なんとなしに、すれ違い様に士郎が言うと凛は目を瞬いていた。その日の放課後だ。慎二が廊下の向かいから、士郎に声を掛けてきた。
 曰く、弓道場の掃除代わりにやってくれ、との事。暇だろ、僕は忙しいから頼むよ。そんな理屈にもならない横柄な態度に、士郎は笑った。

『やっと話し掛けてくれたな』
『はあ?』
『それ、お前の仕事だろ。大体俺はもう弓道部は辞めたんだし、代わってやる訳ないだろうが。でも手伝いぐらいはしてやる。来いよ』
『ちょ、はぁ!? 僕の話聞いてたか!? 忙しいって言っただろ!』
『はいはい』

 慎二の腕を掴んで、士郎は無理矢理慎二を弓道場に連れて行った。
 文句を言いながらも、慎二は仕方なく掃除を始める。外が暗くなる頃、士郎は雑巾掛けをしながら話しかけた。

『で、慎二』
『なんだ衛宮』
『お前、キモいなぁ』
『はあ!? 誰がキモいだって!?』
『慎二が。だってさ、本当は俺と話す切っ掛けが欲しかったんじゃないか? だからあんな態度で話し掛けてきた。男のそれ、キモいだろ』
『はっ。誰が衛宮なんかと話す切っ掛けなんか欲しがるもんか。自意識過剰なんじゃないの? オマエの方がキモいね』
『慎二のキモさには負ける。ワカメヘアーとかどうなの? 頭の軽い女引っ掛けて悦に浸るのも、遠坂に変に絡んで一蹴されるのも、つっけんどんに一成の奴に毒吐くのも、全部キモい。何より妹に当たる様は見てて吐き気がする』
『……あのさ、衛宮』
『なんだよ』
『オマエ、ウザい。そういうこと言ってると、後悔するぜ』
『は、誰が』
『衛宮に決まってるだろ? そんな事も言われなきゃ分かんないのかよ』
『慎二は現在進行形で後悔してる臭いけどな』
『……は?』
『お、やるか?』

 慎二が掃除の手を止め、士郎を睨む。士郎も立ち上がって慎二を睨んだ。
 ――その時だ。ふと、校庭の方から、何か鋼の打ち鳴らされる音が聞こえた。

『ん、なんだ?』
『……、……!』

 首を捻る士郎と、何かを察して顔を青ざめさせる慎二。士郎は掃除を止めて校庭の方に向かう。それを、慎二は血相を変えて止めた。

『待て衛宮! 行くな!』
『なんでだよ? まだ居残ってる奴が、なんかばか騒ぎしてるだけだろ。注意の一つでもしてやんないとな。この頃物騒だし』
『馬鹿か!? ちょっ、待て! 衛宮!』

 慎二の制止も聞かず、軽い気持ちで鋼の音の聞こえる方へ足を向ける士郎に、慎二は立ち尽くした。暫くして、頭を掻き毟り、慎二はクソッ! と毒吐くと士郎を追う。引き留める為に。
 しかし、慎二のその逡巡していた時間が、運命の分かれ道だった。

 士郎は見た。校庭で激しく戦う赤い男と、青い男を。真紅の槍、中華風の双剣。掻き鳴らされる壮絶な戦いの現場。人間の動体
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