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提督はBarにいる。
鎮守府のバレンタイン事情〜オムニバス編・2019〜
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ったとか。



〜グラーフの場合〜※グラーフ視点のお話です。

 角砂糖をブランデーに浸す。たっぷりと吸って琥珀色に染まったら取り出し、砂糖に吸わせて残ったブランデーはカップに半分ずつ入れる。『あの人』はお酒が好きだから、私の分よりも多めに。

 スプーンに角砂糖を乗せて、火を点ける。火が点いている内にカップにいれて、中のブランデーにも引火させる。1分程かき混ぜながら、砂糖を溶かしながらアルコールを飛ばす。砂糖が熔けてカラメルの香りがしてきたら頃合いだ。

 予め淹れておいたコーヒーを注いで火を消し、軽くかき混ぜる。上にホイップクリームを乗せて、仕上げに細かく削ったチョコレートを散らせば完成だ。冷めない内に届けよう。

「アトミラール、コーヒーが入った。休憩にしよう」

 そう、私の愛しい『提督』の下へ。

「お?今日のコーヒーはいつもとカップが違うな。それに香りも……」

「ふふ、今日は特別だ」

 今日は2月14日、バレンタインデーだ。ドイツでは男性が女性に贈り物をするが、日本では女性が意中の男性にチョコレートを贈る日らしい。私も提督に作って贈る事を考えたのだが、いかんせん私はあまり料理が得意ではない。なので、前に褒められたコーヒーを贈り物の代わりにしよう、と考えた。

「……へぇ、『リューデス・ハイマー・カフェ』か。中々凝った淹れ方をしたんだな?」

「きょ、今日はバレンタインデーだからなっ。だが、私はあまり料理が……」

 今日の秘書艦当番だったハツユキに頼み込んで、何とか譲ってもらったのだ。そのせいで秘蔵のワインが1本犠牲になったが、文句は言うまい。

※忘れ去られてるだろうけど、この鎮守府の初雪ちゃんはものっそい飲兵衛なのだ!(by作者)

「成る程、バレンタインのチョコの代わりに美味いコーヒーを淹れてくれたって訳か」

「わ、私だって料理が出来たらチョコレートを渡したいとは……思うの、だが」

「いいさ。あいつは『紅茶党のワタシがコーヒー淹れてあげてるだけ感謝するネー』とか言って、こんなコーヒーは淹れてはくれないからな」

 この人は事あるごとに『本妻』であるコンゴウとの話をする。“ノロケバナシ”という奴らしい。それを聞く度に胸の奥に針が刺さったような痛みが走るが、これは嫉妬なのだろう。目の前のこの人が私は堪らなく好きだが、彼の一番は私ではない。

「そうか……なら、気が向いたらまた違う淹れ方でコーヒーを淹れよう」

「本当か?期待しちゃうぜ俺ぁ」

 それでもいい。それでいい。だってーー……

「Ich brauche dich, weil ich dich liebe.」

「ん?今何て言ったんだ?ドイツ語はあんまり得意じゃなくてな……」


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