ある日突然
前書き [1]後書き
朝起きたら何もかも失っていた。何を失ったのかすらわからない。それほどまでに混乱していた。名前しか覚えていない。横にいる女の人も同じ状況なのだろうか。そしてここは?思いだせない。
「あの、もしかして、名前しか覚えていませんか?」
怯えたように話す女性。
「ええ。あなたも?」
「はい。」
はいという言葉だけ力強く響いた。
「私は、剣崎雅です。」
「俺は、黒坂誠。」
そのあとの長い沈黙。そりゃそうだ。何も話題がない、見つからない。真っ白な空間に二人の人間。手紙も何もない。持ち物もない。あるのは一つの携帯端末。携帯・・・?
「携帯には・・・何もない。」
雅さんはなにかにおびえている??
「あの・・・・・。」
「はい。なんですか?」
「何かにおびえているように見えたもので。」
「はぁ。わたしは何かにおびえてるように見えましたか。」
なにかこの人引っかかる。記憶があるかのような・・・。でも・・・。
「雅さん、なにか隠してません?」
「何も、隠していませんよ。なにも。」
やっぱりおかしい。
「・・・あなたはすべて知っているんじゃないですか?」
「・・・・・・。」
「この状況の原因。」
携帯端末にこの人の個人情報が書いてあった。これだけ、携帯端末にあったのだ。この状況を変えられるのは雅さんだけだ。
「そうだよ。全部知ってる。いつもどおりが崩れるその瞬間も。黒坂くん。当たり前はいつまでも続かないんだよ。人が命尽きるその瞬間まで。」
俺はその言葉でハッとした。俺は・・・・・。
「分かったんだね。じゃあ、楽しんでおいで。」
俺は満足した。
前書き [1]後書き
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ