第四十一幕:しあわせななつの虹
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時崎「七夏ちゃん、ちょっと待ってて! すぐ戻るから!」
七夏「はぁ・・・はぁ・・・」
俺は、凪咲さんの所へ急いだけど、お泊りのお客様の対応をしているようだ。
時崎「いらっしゃいませ。ごゆっくりどうぞ!」
凪咲「柚樹君!?」
時崎「凪咲さんっ! 氷と、お皿を借ります!」
凪咲「はい」
俺は、その一声だけかけて、冷蔵庫から氷を皿に乗せて、七夏ちゃんの部屋に急いだ。
時崎「七夏ちゃん! 氷、持って来たよ」
七夏「はぁ・・・はぁ・・・」
俺はタライの中の水に氷を入れる。タオルを氷水で冷やし、七夏ちゃんの額に乗せる。
七夏「うぅ・・・はぁ・・・」
こんな事しか出来ないなんて・・・。雨粒が窓を叩く音は、不安な気持ちを増幅させられる。七夏ちゃんも同じ気持ちなのかも知れない。
時崎「七夏ちゃん」
俺は、タオルを交換する間隔を短くする。
七夏「はぁ・・・はぁ・・・」
ただひたすらに、七夏ちゃんのタオルを交換するだけになっていた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
タオルを裏返して、冷やして・・・の繰り返しで数時間経過していた。だけど、その効果なのか、息苦しそうだった七夏ちゃんは、今、落ち着いて休んでくれている。雨も上がったようだった。
七夏「すー・・・すー・・・」
時崎「七夏ちゃん・・・ちょっと、ごめんね」
俺はタオル交換の時、七夏ちゃんの額に手の甲をあてた。
時崎「・・・良かった。熱は下がっている」
七夏「すー・・・すー・・・」
タライの氷は解けて水になっていたけど、追加の氷は必要なさそうだ。
そのまま、冷たい水で、七夏ちゃんの額を冷やす。
七夏「んん・・・」
時崎「!?」
七夏「・・・ちゃ・・・」
ちゃ? 七夏ちゃん、天美さんと一緒の夢でも見ているのだろうか? 夢を見るという事は眠りが浅くなった事を意味する。もう少しで目覚めてくれるかも知れないな。
七夏「すー・・・すー・・・」
一時はどうなるかと思ったけど、落ち着きを取り戻してくれたみたいで本当に良かった。あのまま、七夏ちゃんの希望を聞いて水族館へ出掛けていたら、大変な事になっていたと思うと、少し寒気がした。ちょっとした変化に気付いてあげられるようになりたい。
七夏「・・・さん」
時崎「!? 七夏ちゃん!?」
七夏ちゃんは、俺の方を見て微笑み、そのまま目を閉じた。これにもきっと意味があるはずだ。だけど、分からない。ん!? お布団から七夏ちゃんの手が出ている。俺はその手を優しく両手で包んだ。
七夏「くすっ☆ 柚樹さん☆」
時崎「ん?」
七夏「ありがとうです☆」
時崎「あ、ああ。気分はどう?」
七夏「はい♪ 今はとても楽です♪」
時崎「そう・・・よかった」
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