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人理を守れ、エミヤさん!
エミヤだよ!全員集合!
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い。

 俺の事情は、俺のものでしかない。他人は関係ない。カルデアでの戦いを終わらせるまで、俺の事は後回しだ。全てが終わった後に、俺は自分の為に動こう。
 やる事は変わらない。成すべき事も。なら、迷う事なんて何もなかった。『この世全ての悪』は俺が自分の状態に絶望し、再起不能になると思っていたのかもしれないが、生憎とこの程度で絶望するほど心は硝子ではない。仮に硝子だったとしてもそれは強化硝子だ。

 俺はエミヤシロウなのだろう。勘違いで勝手に苦悩していた戯けなのだろう。だが、それでも、俺はあくまで衛宮士郎だ。
 英霊エミヤではない。エミヤの記録にある『衛宮士郎』でもない。俺は俺だ。平行世界の自分がなんだ。俺の自我は、俺の立脚点は、決して他の誰の物でもないと断言できる。なら――ブレる恐れはない。揺らぐ事なんて有り得ない。悲劇の主人公なんて柄ではないのだ、精々足掻くとする。一流の悲劇より三流の喜劇の方が好きなのだから。
 陳腐でいい、安っぽくてもいい、俺の人生だ。幕を引いて満足するのは俺だ。俺でなければならない。俺が一番大切なのは、俺自身が晴れ晴れとしていられる事。結果として周囲を幸福に出来たらいいのだと、今でも思っている。

 たっぷり七時間から八時間は寝ただろう。休養は充分だ。これ以上は体が鈍る。さっさと起きるとしよう。

「ん?」

 医務室のベッドの横で、椅子に座ってこちらを看病してくれていたらしいアルトリアとオルタを見つける。汗を拭ってくれていたのか、アルトリアが手拭いを持っている。
 そしてベッドに上体を凭れ、俯せに眠っている幼女がありけり。

 ……。
 …………。
 ………………え?

「し、シロウ……? もう起きたのですか!?」

 俺が目を開いたのに気づいたアルトリアが、目をぱちくりさせた後、驚いたように声を上擦らせた。

「あ、ああ……アルトリア、この娘は……」
「桜ですか? 彼女は――」

 説明を受け、俺は頭を抱えた。

 仏陀の野郎、寝てやがる。人理焼却されてるからご臨終しているのかもしれない。そして聖杯、キミは録に願いを叶えた実績がないのにこんな時だけ本気を出すなと小一時間ほど文句を言ってやりたくなる。持ち帰れてるならダグザの大釜へ改造不可避だ。

「起きて大丈夫なのですか?」
「ん、あー……そう、だな……どうだろう」

 アルトリアの問いに、俺は数瞬考える。起きると言っても、寝てろと言われるのは目に見えていた。が、もう充分に休んだ。聞けばクー・フーリン達はスカイを攻略してきたらしいが、エミヤ達の再召喚はこれから行うらしい。
 頭を捻っていると、ふとオルタが林檎の皮を黒い聖剣で剥いているのを横目に見咎める。おい、とツッコミを入れたくなるのを堪えた。

「入院患者
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