幕間の物語「いつかどこかの時間軸」4
戦後処理だねカルデアさん!
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んですか?」
マシュもまた、士郎に付きっきりだった故に、まだネロ達が攻略に当たった特異点での戦闘記録を知らなかった。
疲れたというクー・フーリンを呼び止めるのは気が引けたが、聞いておかねばならない気がしたのだ。
アイルランド随一の英雄は、心底から疲れきった声音で応じる。戦士は自らの手柄を吹聴するものではないが、求められれば口を開くものだ。
「わりぃが大分はしょるぜ。詳しく知りたけりゃ記録を見ればいいんだしな」
「はい」
「波濤の獣を討った所までは知ってるな? ソイツの中にあった聖杯を、フェルディアの野郎が回収して行きやがった。で、ちんたら鬼ごっこしてやる暇もなかったんでな、ネロとアーチャーの野郎、それからアルカディアの狩人にフェルディアを任せてオレは本丸に突っ込んだ。そこで待ち構えていた師匠――ああ、スカサハだな。ソイツと一騎討ちして、終わった」
「終わった?」
「悪いな。覚えてねぇよ。どんなふうに戦ったかなんてよ」
首を傾げるマシュに、クー・フーリンは片眉を落として苦笑する。実際覚えていないのだから仕方がないのだ。
記録を見た方が分かりやすいと言ったのも、それが理由である。
「本気でやったからな。変身しちまった」
「あっ」
「理性がトンで、何があったかなんざ記憶にねぇよ。だがまあ、それでほぼ相討ちだったんだから笑えねぇ。お蔭で正気に戻れたけどな」
此処穿たれたんだぜと笑うクー・フーリンの指は、心臓から指一本分逸れた位置を指している。
魔槍と魔槍のぶつかり合いに決着はなかった。故にその傷は、純粋なスカサハの技量によってつけられたものなのだろう。本来なら死に至る傷の深さである。しかし、
「ま、この程度で死ぬようじゃあ、オレは英雄になんぞなってねぇ。相討ちに近い形で、オレの槍がスカサハの心臓を抉って――仕舞いだ」
ゲイ・ボルクは不死殺しの魔槍である。死のないスカサハといえど、この魔槍で心臓を穿たれれば、死なぬ道理はない。例え死を剥奪されていたとしても、その存在を『殺す』のがゲイ・ボルク故に。
奇しくも生き汚さが生死を分けたのである。死ぬつもりのないクー・フーリンと、死にたがりのスカサハ。勝敗は最初から決まっていたのかもしれない。
「そういう訳だ。――お、そうだお嬢ちゃん。暇がありゃあマスターに伝えておいてくれ」
「あ、はい。何をでしょう?」
「『賭けはオレの勝ちだ。とっとと起きろ馬鹿野郎』だ。頼んだぜ」
ひらひらと後ろ手に手を振って、歩き去っていくクー・フーリンに、マシュは微笑んだ。そして実感する。今回も、カルデアに帰ってこれたんだ――と。
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