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人理を守れ、エミヤさん!
真名開示 エミヤシロウ
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 大聖杯の浄化が完了した。
 『この世全ての悪』は完全に消滅し、大聖杯は無色の魔力へと回帰する。その瞬間、聖杯の泥に呑まれていた士郎は、その場に頽れた。
 意識がない。慌てて駆け寄ったマシュと桜が、その体に縋りつく。
 彼と霊的繋がりがあったマシュは、その至近にいた故に彼の見せられていた光景を見ていた。――ロマニも、また。
 暴かれた真実に、立ち竦む。それは人間だからこその、ロマニだからこその、非人間的な行いへの罪悪感。

 魔術王ソロモンがカルデアに再度召喚されたのは、何もロマニがいたからだけではない。
 士郎との縁が魔術王にもあったからだ。直視させられた罪に、ロマニの心が軋む。

「シロウ――貴方は……」

 そして。

 彼と契約で繋がっていたのは、マシュ達だけではない。アルトリアもまた、その因果を見た。
 そして彼らの秘密も理解する。その旅路を知った。人類史の守護、この男に課せられた重すぎる使命――死した後の、過酷な運命。

 救いがない。――それを救いたいと、アルトリアは思った。

 このまま放っておけば、衛宮士郎は呪いに犯されて死に至る。『この世全ての悪』の遺した呪いは、彼の魂にまで至っている。魔術王すら、これを取り除く事は出来ないほど、根深いそれであった。

 故に、アルトリアは士郎の傍に片膝をつき、その体へ触れた。

「っ! アルトリアさん!? 何を!」
「マシュ・キリエライト。貴女が宿す英霊は、貴女の心根の貴さを証明している。なら私は、彼を助けましょう。――貴方達の戦いに『この』私は同道出来ませんが、せめてその一助となる事は出来ます」

 アルトリアの手で、聖剣の鞘が士郎へ押し込まれる。魔法の域にある宝具は、祓えぬはずの呪いをも祓うだろう。右腕の呪詛をも、根刮ぎ。
 マシュは目を見開く。騎士王は高潔だった。詐術にかけられていた事を知っても、それが世界を救うためだったならばまるで咎めない。アーサー王は、真実騎士道の王だった。

「――この特異点の所以までは見えませんでしたが。どうやらこの戦いは、あってはならないものだった。行きなさい、マシュ・キリエライト。ロマニ・アーキマン。こんな所で足踏みしている暇はないでしょう。彼を連れ、カルデアで英気を養うのです」
「その、鞘は――」
「差し上げる。シロウが宿すもよし、そちらの私に譲るもよし。些か急ですが、お別れの時間のようですね。この特異点の原因が排除された故に、どうやら貴方達の退去が始まったようだ」

 淡く微笑むアルトリアに、マシュは改めて敬意を抱き直した。
 本当に、凄い人なんだ――
 士郎を抱き上げ、マシュは一礼する。カルデアのマスターは、今暫しの時を眠り続けるだろう。次の特異点には間に合わないかもしれない。だがそ
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