油断大敵だね士郎くん!
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め息を溢す。その醜悪な面を見ていたら、蛸が今後食い辛くなる。なるほど、いつぞやのアルトリアが蛸料理に怯んでいた理由が分かった。厳密には違う生物だが、こうも似ていると苦手意識が湧くのも頷ける。
奴さんはどうしても俺達を中に入れたくないらしい。黒化英霊達が戦闘態勢に移行する。
ディルムッドが双槍を構え、ランスロットが魔剣を抜き放つ。百貌が周囲を取り囲むように分散し、魔本の魔力が高まった。張り詰めていく空気に、ぎゅ、と小さな手で桜が俺の赤い外套を握る。その不安を解くように、俺は背中の桜に軽く言った。
「心配するな、激しく動いたりはしない」
すぐに片をつける。だからしっかり掴まっていろよと告げた。
正直な話、こんな所にまで付いてくる桜には説教が必要なんだろうが、それよりも桜に必要なのは我が儘を聞いてくれる存在だ。思う存分に我が儘を聞いてくれて、頼らせてくれて、それでいて守ってくれる存在が今の桜には必要なのである。
桜の意思を守りながらその命を守り、そして特異点を攻略する。それを全部成し遂げねばならないのが大人の辛いところだが。なに、荷物を背負うのには慣れている。今は人理の命運を背負っているのだ、少女の命が乗っかった程度でハンデにはならない。
油断はしない。しかし緊張も過度にしない。順当に戦い、順当に勝つ。宝具の図面を脳裏にイメージし、?鉄を上げる。と、その工程に割り込む声があった。
「――早速か。此処は余が引き受けよう」
「ら、ライダー……?」
戦車の御台に座り、手綱を握っている赤毛の征服者だ。戦車の中で不安げに見上げている少年の頭に分厚く大きな手を置き、征服王は自信ありげに笑う。
その雄らしい精悍な笑みを浮かべたまま、彼は堂々と告げる。
「彼奴らは余が討つ。うぬらは先に進むがいい」
「……ライダー、何か策が?」
「策? そんな小賢しいものはない! 英霊の誇りを失った彼奴らに、余の王道を示してやるまでの事よ。なぁに、たかがサーヴァント四騎如き、余の敵ではないわ」
アルトリアの問いに、威風を昂らせるイスカンダルの放言は、彼が犠牲になるつもりなどない事を感じさせる。
俺にはイスカンダルのしようとしている事が分かった。そしてそれが最も合理的である事も同時に理解する。
「聖杯はうぬらに任せよう。然る後に雌雄を決しようぞ」
「意気込みは有り難いが、余り遅いようだと手遅れになるぞ。ああ、俺としてはそちらの方が助かるが」
「ランサーのマスターよ、余を出し抜かんとする意気込みやよし! その時はうぬが一枚上手だっただけである。怨み言は言わん、好きにするがいい。だが忘れるな、余はうぬとランサーをこの聖杯戦争最強の敵と見込んでおる。覚悟しておれ、必ずうぬらを征して見せよう」
「――
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