未遠川の穹
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、謝るよ。だけど英雄王に此処で退場してもらうには、キミを此処で使い潰さないといけない。『バーサーカー、全力で英雄王を討て』」
残されていた全ての令呪を注ぎ込み、士郎の負担になるバーサーカーのマスター権を破棄する。これでバーサーカーはこの世への楔をなくし、魔力が尽きるとそのまま消滅するだろう。
しかし令呪の齎した魔力は膨大だ。この一戦に限り、全力戦闘が可能である。マシュが自身の触れている黒騎士の異変に気づいた。
『……ドクターっ? 彼に何かしましたか!?』
「いいや、何も悪い事はしてないよ」
悪い事ではない、善悪を除いた合理的な手を打っただけだ。そして、それをマシュが知る必要はない。……ああ、と思う。
――やっぱりボクは冷酷なソロモンだ。だけど、そんなボクでも、キミの助けには成れる。正義はキミの領分だろう、士郎くん――
だから。余計な事をする英雄王には、此処で斃れてもらわないといけない。士郎が士郎でいられるように、偽善ですらない独善であると謗られようとも。
「■■■■■■ッッッ!!」
バーサーカーが脈動する。
全力を発揮するバーサーカーの全てが英雄王に向けられた。自身の霊基に満ちる令呪の魔力は、狂戦士の全スペックを解放したのだ。脆弱なマスターの縛りがなく、もとよりなかった自滅への恐れもなく、英雄王しか見えなくなった彼にマシュを気にする理性すらない。
だが――流石は完璧な騎士。湖の騎士だ。令呪に縛られようと、狂化に完全な支配を受けようと、背にある者を振り落とし、無差別に攻撃だけはしなかった。
「ぬ……」
英雄王が何かに気づく。そして笑みを浮かべた。嫌な予感に目を細め、ソロモンは指輪に魔力を込める。
アスモデウスを還し、ソロモンは落下していきながら輝舟の周囲の空間を固定していき、更にその周囲に遺失したもの、現存するもの問わずにあらゆる呪詛へ指向性を与え英雄王へばら撒いた。
「――士郎くん!」
『魔力を回す。決めにいくぞ、マシュ!』
『はいっ!』
限界などとうに迎えているだろうに、更に魔力を振り絞りマシュへ回す気力は流石だった。
一瞬、動きの止まった輝舟。英雄王ならば瞬く間に空間固定を解除し、呪詛を解呪してしまうだろう。しかし高速機動戦の最中、僅かの停滞も命取りである。バーサーカーが戦闘機を突貫させた。
マシュは戦闘機より飛び出し、一瞬早くバーサーカーよりも先に英雄王を捉える。
『――顕現せよ「いまは遥か理想の城」!』
穹に拓かれるは白亜の城。一切の穢れなき、究極の守りの一つ。
しかしその城は、何も防壁にのみ用いられない訳ではない。内部に取り込んだものを閉じ込める、脱出不可能の絶壁ともなるのだ。英雄王とバーサー
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