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勇者に恋人を奪われて引退した元救国の騎士の復活譚
冒険者、エーデル
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 ──と、朝の鍛練が終わり、朝食を兼ねて情報収集するために買っておいた号外を手に持ちながらそこまで思い耽った後、感慨深く目をゆっくりと落とした。

「……あれから五年か。結構経ったんだな」

 思わず、独り言をぼやいてしまう。

 何せ、偶然にも昨夜買っておいた記事の特集のなかに、『あの戦争から五年。王国と帝国との間に何があったのか』というものがあったのだから。

 それで先程まで思い耽っていた訳なのだが、まだ自分は若いというのに随分と老けた後にやりそうなこと朝からしているのに、少し苦笑いだ。  

 宿屋『月花』。

 そこは、ここアリエス王国の首都の北区に建っている。
 どうやら近くにある大手ギルドの冒険者達の為に建てられた宿屋らしく、設備は流石大手ギルドが設備投資をしているのか、非常に清潔感があり、居心地が良いものになっていた。

 突然だが、実は俺は、五年前までは軍人だった。
 三年前からこの北区のギルドの依頼を、片っ端から片付けながらこうして生計を立てているが、五年前まではずっと戦場に行っては敵を殺し回って、勲章を授与されたり、多大な恩賞や手配金で生活していた。
 
 なんでそんな殺し回っていたのかは追々言うとして、まあ今は訳あって冒険者をやっている。
 


「──エーデルさん。おはようございます」

「あ、おはよう。エリー」

 朝食を食べていると、話しかけてくる女の子が一人。
 
 この子は『月花』の看板娘のエリーという可愛らしい女の子だ。
 栗色のセミロングの髪、藍色の深い海のような綺麗な瞳をしている。

「今日もお仕事ですか?」

「うん。今日は薬草採集に行こうと思ってる」

「へえ……薬草採集ですか」

「そう。前からギルドの掲示板に貼られていたんだけど、誰もその依頼書を受けてないみたいだからな」

「そうなんですね。スープの方はどうですか?」

 『月花』を運営している看板娘を張っている 

「うん。今日もしっかり美味いぞ」

 記事を読んでいたことで少し冷めた野菜スープを口に運ぶと、エリーに向かって微笑む。

「ありがとうございます! そう言われると作った甲斐があるというものです」

「ここに来てから三年なんだけど、めきめきと料理が上手くなってるぞ」

 満更でもない様子で笑顔を浮かべるエリーはそう言われて「……そ、そうでしょうか」と、頬を赤く染めて照れるという、これ又青年であればうっかりと惚れてしまう程の可愛らしい反応を見せる。
 士官学校に、もしもエリーが在籍していたのなら、即刻多数の異性から食事を誘われていることだろう。

(これはエリーの父や母が、この無意識に心を奪う仕草をする娘を、危なっかしくて嫁に行かせたく
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