五年後 消えた英雄に焦がれる少女と一人の冒険者
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「ふふ。……ハルトは本当にリールが好きなんだね。だからこそ、リールが夢中になっている相手がどれ程大きな器の持ち主だってことに気付いたのかな……ハルトの予想通り、リールが恋をしてるのは、この国にとって、あの勇者にも劣らないほどの器の持ち主だよ」
「勇者にも劣らないほどの器の持ち主……まさか」
イーリスの言葉に、ハルトは目を見張ると同時に、確信めいた顔付きをする。
しかし、その大きすぎる器の持ち主だと確信したからこそ、ハルトは表情を曇らせた。
「……でも、無理があるんじゃないのかい? あれほどの英傑に恋い焦がれていても、その想いが届く可能性は……」
「うん。確かにそうだよね。でも、あの子が今のような有望株になれたのも、その高過ぎる目標に辿り着くためと必死に努力してきた成果なんだ。だから、決して届くことは無くても、私はあの子を応援するよ」
先程までの雰囲気とは打って変わって、真っ直ぐに意志を伝えるイーリスの言葉に、ゆっくりと頷いた。
「……そっか。リールが本気で、あの英傑に振り向いて貰うために努力してるのであれば、僕も負けてられない。リールに振り向いて貰うために努力しないとだね?」
「……うん。頑張って。流石に『救国の戦槍』相手じゃ、分が悪いと思うけど、勿論ハルトの恋だって応援するからね」
屈託なく笑うハルトに対し、微笑を浮かべるイーリス。
二人は再び、リールが出ていった教室の扉に、目線を向けた。
王立士官学校から南に数キロ離れた平民区の、こじんまりとした宿のとある一室。
その部屋は、特にこれといった家具は殆ど置いていない、ベッドと机、椅子が一つずつあるだけの無機質なものだった。
机の上には、エールを少し飲み残しているジョッキと、無造作に置かれた蓋を開けたままの三本の内一本の酒瓶には半分以上のエールが残っている。
それを見る限り、まだ真新しいので、つまりはそこのベッドで寝ている無精髭を伸ばした若者が昨夜にそれらを飲み、途中で酔って寝てしまったことが予想できる。
ベッドで体を大の字にして寝ている、再び言うが無精髭を生やし、次いでに目下に隈が出来ている、如何にも浮浪者のような、辛うじて若者だと判別できる青年は今、一回二回と大きく寝返りを打った後、何故か鍛え上げられた体を起こそうとした。
しかし、起こそうとした体は二日酔いをしてしまったせいなのだろうか。
敢えなく、また着床してしまった。
「……ぁあ」
アンデッドが出す呻き声のようはものを上げる。
「……糞。ぁた、まが……ジンジン……する」
独り言にしては大きい声量だが、それでも常人には何を言っているのか聞き
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