撹乱する意思の蠢き(下)
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セイバーだ。大上段に聖剣を構え、黄金の輝きを魅せている。エクスカリバーの魔力の奔流に、大海魔はライダーを追う触手の半数を割いた。同時、セイバーが離脱する。聖剣を放つ気など毛頭無かったのである。
ライダーが笑った。愉快そうに。
「そういう事か、味な真似を……! やれい、ランサーのマスター!」
「――我が骨子は捻れ狂う……! 『偽・螺旋剣』!」
魔力の限界が来る。士郎は唇の端を噛み切りながらも魔力を振り絞り――傍らのウェイバーは一瞬、幻視した。ガゴンッ、と廻る、途方もなく大きな歯車が回るのを。
幻覚なのだろう。瞬きの瞬間に消え去る歯車のイメージ。しかし剣弾を放とうとするや、限界を超えたはずの魔力が底上げされたように膨れ上がる。触手の脅威が半減した刹那、大海魔の直上に至った戦車から、士郎が螺旋剣を射ち放った。
大海魔の本体を、過たず穿つ螺旋の剣弾。肉の層を掻き混ぜて進み、中枢に至るや炸裂させる。黒化英霊を確実に仕留めたのだろう、士郎は大海魔の存在が解れ、異界へ送還されていくのを見ると残心を解く。
「やるではないかっ、ランサーのマスター! 流石は余の見込んだ、この聖杯戦争で最たる敵なだけはある!」
「お褒めに与り光栄だな、征服王。それより地上に下ろしてくれないか。飛行機の類いは苦手でね」
皮肉を飛ばす士郎にライダーは豪放に笑う。
戦略的にはここで士郎を仕留めてしまうのが合理的だが、その前に士郎はウェイバーを斬るだろう。それにそんな合理、ライダーの辞書には存在しない。
戦車を地上に下ろすと、士郎は戦車から飛び降りる。大海魔は消えた。ならば共同戦線は、そのまま聖杯の調査に向かうべきである。問題は、今も空で繰り広げられる熾烈な空中機動戦だろう。そちらをなんとかしなければ、と士郎が考え始めるや――こちらに合流しようとしていたセイバーが、鬼気迫る声音で喚起してきた。
「シロウ――ッ!」
その声に、体が反応する。ライダーも気づいた。だが、遅い。
――最速の座に据えられるに相応しい黒影が、背後から士郎へと迫り。不気味に脈打つ呪いの黄が、閃く。
「――穿て、『必滅の黄薔薇』」
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