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人理を守れ、エミヤさん!
状況整理だセイバーさん!
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に、私達には確実に味方と言える陣営があります」
「ランサーね?」
「ええ。光の御子は知っての通り、マスターも実力と人柄に疑いはありません。戦力という意味では彼らと組んでいる私達が最も突出している。聖杯の異常を調査する間は征服王や魔術王とも停戦していますが、彼らとは同盟を結んでいるわけではないので油断は出来ません。確実な味方と言える強力な存在は、今は歓迎すべきでしょう。今成すべきは、存在するかもしれない九騎目のサーヴァントを警戒しつつ、聖杯を調査する事。これが最優先です」

 つまり、エミヤと名乗った男の提示した道筋の通りである。
 アイリスフィールは腑に落ちないものを感じていた。それはセイバーも同じなようで、どこか考え込むような表情をしている。

「……道理は通っているわ。合理的で、筋が通っていて、隙間も陥穽もない。そうするのが自然なのが、逆に不自然ね……」
「しかしアイリスフィール、そうするしかないというのも事実です。人柄は信頼できる、しかしその弁には些か誘導している気配がする、かといって背くには道理と筋が通っている。まるで性質の悪い幻術に掛けられているようだ」

 エミヤを完全に信頼していいのか。セイバーの直感は、大きな目で見ればエミヤを信じるべきだと――否、寧ろエミヤと共に戦うべきだと感じているが……。王としての経験で培った眼力が、謀られている予感を訴えている。
 しかし隙がない。疑念が噴出する要素を見つけられない。ブリテンの宮廷魔術師にからかわれているような錯覚がする。

 とりあえず、やるべき事は改めて決めた。兎に角聖杯だ。それが異常なのは明白なのだから調査する事は避けられない。であれば今は頭を捻っても答えが出ない問題は後回しでいい。悩むだけ無駄である。
 そうと割り切った剣の主従は、大聖杯のある円蔵山の方角へ足を向ける。光の御子や征服王と落ち合う場所は其処なのだ。

 しかし。聖杯は、自らに近づかんとする者を拒む為に、足掻く。

「――ッ!?」
「これは……宝具の大規模な魔力反応……!?」

 感知能力が秀でている訳でもない彼女達が、それでもはっきりと感じ取れるほどの莫大な魔力が、不意に空間に波及して届く。
 アイリスフィールは驚愕し、焦燥に塗れた貌で絶句した。

「そんな……近いわ! こんな、まだ人がいるのに、こんな規模の魔術行使をするだなんて!」
「アイリスフィール!」
「――行って! 私もすぐ追いかけるから!」

 セイバーは迷わずアイリスフィールの指示に応じて駆け出した。疾風と化して疾走する。
 向かうは未遠川、黒化し自我を剥奪された英霊、道具として起動する聖杯の自衛本能。その宝具の性質上、真名解放も担い手の自我も不要とする『青髭』が、制御不能の大海魔を召喚しようとしていた。


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