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人理を守れ、エミヤさん!
王様に物申す士郎くん!
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去のお前から助けてやる。
 勘違いはするな、俺は自分の為に過去のお前を助けているに過ぎない。自己満足で、未来のお前も救ってやるさ。
 ああ、上から目線上等だ。なんたってそんな不幸(ヨゴレ)、綺麗好きの俺には耐えられない。せめて俺の目の届く範囲は幸福(キレイ)でないと、潔癖性の俺は気が狂いそうだ。

 だからこんな特異点なんか、人理定礎を巡る旅なんか、簡単にパパッと片付けてやる。ロマニやマシュが、もっと好き勝手に生きられる世界に連れ出してやる。

 だから――

「――邪魔をするなら、例えお前が相手であっても容赦はしない」



 黄金とエメラルドによって形成された輝舟、『黄金帆船(ヴィマーナ)』――御座に腰掛け、在るのは原初の絶対者、黄金の英雄王。



 黒化した青髭が儀式を執り行う、未遠川に急行している最中、眼前に立ち塞がるようにして現れたのは輝舟に搭乗した暴君であった。
 俺は敵意も露に真紅の双眸を睨み付ける。喜悦に細まる瞳が見据えるのは――俺だった。
 デミ・サーヴァントであるマシュではない。千里眼を持つ同士にして、同等の格を持つ魔術王のデミ・サーヴァントのロマニでもない。俺にこそ立ち塞がっている。

「吼えたな、道化」

 クツクツと可笑しげに笑む英雄王は、背後の空間に百を超える波紋を出現させていた。そこから顔を出すのは、いうまでもなく宝具の原典――俺とは戦わないと言い、その舌の根が乾く前に再度立ち塞がる了見は天災のそれだ。

「……」
「まさか送り届けてくれるのかい? 流石は英雄王(センパイ)様、太っ腹だね」
「フン。(まなこ)を見開いたまま寝言を垂れるとは器用な奴よ。人間に堕ちた貴様はこの我を仰ぐべき雑種に過ぎん。貴様の生んだ因果を清算しに来てやったのだ、その栄誉に咽び臣に加わるのなら同乗させてやらんでもない」

 英雄王の存在感を前に、緊張に身を強張らせるマシュと、戯れ言を吐くロマニ。
 どこか機嫌良さげにギルガメッシュは鼻を鳴らす。――それに、ロマニは目を見開いた。
 相も変わらず訳が分からない。その千里眼を持つ者同士の謎の共感をやめろ。今のロマニは千里眼を厳重に封印しているから『視えない』のだ、ロマニにも俺にも分かるように言え。

「感動に打ち震えよ、道化。貴様の膿、冬木(ここ)で出し切ってやろうと云うのだ」
「要らないお世話だな、英雄王。其処を退け、今はお前に構っている暇はない」
「釣れない事を言うな、一生にそう何度とない王の慈悲だ。有り難く甘受するがいい。――それにしても、懲りもせず寄り道に精を出す愚かさは変わらんな、贋作者(フェイカー)
「……」

 真紅の瞳に、桜が映る。びくりと震え、怯える桜を背中に庇い、俺は苛立ちも露に問いかけた。


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