宝具爆発! きみがやらなきゃ誰がやる士郎くん!
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すぐに効果が出た。
液体を嚥下するなり、桜は苦しげに胸を抑えて踞った。げぇげぇと吐瀉物を吐き出す。
――その中には、大小数匹の蟲が混ざっていた。
悶え苦しむ親指ほどの醜悪な蟲。それ以外を踏み潰し、一番大きな蟲を指先で摘まんだ。
俺の知る桜には最初から寄生虫が巣食っていた。この時間軸ではどうなのか、確証はなかった。しかし存在の有無を見切れるロマニがいる以上、余計な手間を掛けずに済んだ。
「ご機嫌はいかがかな? 妖怪マキリ・ゾォルケン」
『ぐ、ぎィ……?! な、何、何が……!?』
「効き目は充分。大変結構だ」
生理的な反応で、嘔吐いたせいか涙目の桜が目を丸くしてこちらを見ていた。
桜の体内に宝具は残らない。所詮は投影されたもの、消滅すれば世界には残らない。俺は微笑んで指に挟んでいた蟲を見せる。
「声で分かるだろう? これは、君を怖くて気持ち悪い目に遭わせてきた諸悪の根元、間桐の爺さんだ」
「おじいさま……?」
「そう。そしてソイツは、今いなくなる」
軽く虚空に放り、慣れた工程を踏んで投影した干将で蟲を真っ二つに切り裂いた。
そうして間桐の支配者は、劇的でもなんでもなく、あっさりとドラマもなしに命の旅を終える。
これは個人的な見解だが、魔術師を相手にちんたらとやりあうのは愚かである。殺ると決めたら電撃的でなければならない、不意を打つなら一撃で仕留めねばならない、魔術師に対策させてはならない。魔術師殺し三原則である。
上手くやれば、長々とドラマチックな展開になんてなる訳もないのだ。
無表情で――しかしどこか呆然として蟲の残骸を見詰める桜の頭に手を置く。
「ごめんな。嘔吐させて。でもこれで、君の体は君だけのものになった。君を苦しめるものもなくなった」
「……」
「……突然過ぎて分からなかったか。すまないが今夜は俺達と寝よう。もう遅い時間だ」
切嗣に目配せすると、彼は頷いて霊体化してこの場を去っていく。切嗣には他の仕事もこなして貰わねばならない。
桜の手を引き、歩幅を合わせて歩く。マシュに目をやって促すと、マシュも桜を安心させるために優しく微笑んで反対の手を取った。両手を引かれて歩く桜は、呆然としているものの、何かを思い出したように俺とマシュを見上げていた。
ホテルに入ると、そのままマシュと挟んで、三人で川の字になって寝た。それで、この夜は終わる。
「あれ、ボクは?」
「起きてろ。お前は見張りな」
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