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彼願白書
逆さ磔の悪魔
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してきた。」

「あのトミー・リー・ジョーンズは、最初からホワイトハウスに切られてた、ってわけ?」

「ニコラス・ロングは艦娘を独自研究する派閥に与していた。米国は現在、自国艦のタイプ―コルドロンの量産体制を作り上げるためにタイプ―マスターシップをこちらに渡す見返りに実戦データからタイプ―コルドロン用の圧縮データをこちらに日本側に作らせているわけだけど、その過程でどうしてもブラックボックスである部分も丸裸になってしまう。ペンタゴンにはそこをよしとしない派閥が当然多いのでな。タイプ―コルドロンの自国開発も当然、進められているが日本側の技術開示を得られず、捗ってないのが現状だ。」

「そこで自分達で一から量産に向いた艦娘のタイプを作ろうとし始めた。それがあのトミー・リー・ジョーンズの派閥ってことね。」

「そこまでは国際競争だ。文句は言えん。ただ、ニコラス・ロングの派閥は選んだ手法が不味かった。本来なら廃棄予定になるハズだったタイプ―オリジナル、その生産ラインをベースに研究を始めたんだ。何しろ、廃棄するほど研究が進んでいたからな。」

「懲りないわね。じゃ、リバースド・ナインのサンプルを欲したのもタイプ―オリジナルの設計図の埋められない歯抜けを埋めるヒントを欲したが故……ということじゃない。」

叢雲は呆れ果てたと言わんばかりに肩を竦める。
要するに彼等はハーミテスの時から諦めていなかったのだ。

「彼等はそう簡単には諦めきれんさ。君達がどれだけ単一戦力として桁違いかは、他ならぬ君達が証明しているからね。君達の量産を夢見るのは止められないだろうさ。」

「それで、彼等はいつ諦めるの?」

叢雲が投げ掛けた質問は、もっとも悪辣な質問だろう。
答えてはいけない答えしかない質問なのだから。

「諦める日が来るとしたら、それは君達がもう必要ない世界が来た時だろうな。ネームレベルがネームレベルでなくなった頃、深海との戦いに決着が着いた頃、私は未来視の技術は持ち合わせてないのでね、こればっかりはわからない。」

「まぁ、アンタはそう言うわね。」

叢雲だって、わかっているのだ。
この手合いの質問の不毛さくらいは。

「で、ブルネイのビッグパパはどこまで噛んでるの?」

「ブルネイは今回の敵が“リバースド・ナイン”というネームレベルということしか知らせていない。その背景、パワーバランス、アフターカバー、全て知る由のないことだ。」

「ブルネイは自分で辿り着けるわよ?」

「彼等は容易く辿り着けるだろうが、辿り着くことがいいことかどうかの判別も出来ると思うよ。」

壬生森が煙に巻くような口振りの時は、大方、心配はいらないと思っている時だ。
叢雲はそれがわかっているから、呆れたような態度を崩さない。


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