そんなに嫌か士郎くん!
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ということではないか。
アイリスフィールは今更になって戦慄した。アルトリアも理解しているだろう、目の前の男はふざけているようで全くふざけておらず、自身の懐を探らせないまま自らの提案が最善であると思わせてきたことを。
男の提案を覆す思考が浮かばない。アインツベルン最高のマスターであるアイリスフィールは、男の言に一理も二理もあることを認めざるを得なかった。
仕方ない、提案を呑もう。アイリスフィールはそう決意し、虎穴に飛び込む気概を固めた。
「いいわ。貴方と同盟を結びます、エミヤシロウ」
「それは良かった。――ああ、本当に」
アイリスフィールの返答に、シロウは心底安堵したように息を吐いた。
その時である。
「――ほぉ? なにやら薄汚い雑種が馴れ合っているのかと思って来てみれば、存外奇抜な取り合わせが揃っておるではないか」
人形に、小娘に、半神に道化。珍種のバーゲンセールか何かかと笑う、聞き知った傲慢な声音。
咄嗟に城壁の上を見上げると、そこには夜の空を背に抱いた黄金、魔の太陽とすら言える偉容の王者が屹立しているではないか。
アイリスフィールは慌ててそちらに向き、アルトリアは聖剣を構える。クー・フーリンは早速来たかと好戦的な笑みを浮かべた。
そして、シロウは顔を強張らせ、これまでの全てを台無しにする勢いで、クー・フーリンに小声で言った。
「――あの、ちょっと急用思い出したから帰っていいかな」
「はあ!? ダメに決まってんだろいきなり何言ってんだ」
「この流れはマズイだろどう考えても。来てる、これ絶対に来てるから」
シロウの顔は真っ青だ。先程まで強気に話を進めていた男とも思えない。
だが無理もなかった。彼は思い出したのだ。百貌から聞いた情報を。
第四次聖杯戦争で、かの英雄王がアインツベルンの城に訪れた際、起こった『聖杯問答』という酒宴。それに思いっきり巻き込まれる未来を予見して、シロウはなんとかこの場からの離脱を望んでいたのだ。
というかこのタイミングで来なくてもいいだろ! とシロウは頭を抱えそうだった。
これはろくでもないことになる間違いない、とシロウは確信してしまう。
すると案の定、雷鳴を引き連れた蹄の音がここまで聞こえてきたではないか。
またいつものパターンか、とシロウはもう諦めの境地に達していた。
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