第九十話 ならず者達その六
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「言うだけはある」
「いいね、これはかなりね」
「いい河豚でな」
「料理人の人の腕もね」
桜子もてっさを食べている、そのうえでの言葉だ。
「いいよ」
「まるで貝だな」
「それを食べている感じだね」
食感がプリプリとしてだ。
「捌き方もいいから」
「余計にいい」
「そうだね」
「しかもだ」
英雄は食べ続けながらさらに言った。
「食うのに適度な大きさに切られている」
「てっさのね」
「だからいい、並べ方も花の様にしていて奇麗だったしな」
「とことんまでいいね」
「河豚はこうあるべきだ」
こうも言ったのだった。
「まさにな」
「本当にそうだね、これはね」
「当たりだな」
「いい意味でね」
毒に当たるのではなく、だ。
「そうだね」
「全くだ、刺身の跡はな」
「唐揚げもあるしね」
「鍋もある」
「これはもう極楽だよ」
そこにいる様な気分だとだ、桜子は笑って言って酒も飲んだ。その酒も実に美味いものであった。河豚によく合っていた。
「本当にね」
「そうだな」
「全部食べようね」
「白子もあるで」
耕平はこちらもだと言った。
「これも美味いしな」
「河豚は」
紅葉も食べつつ述べる、彼女が食べているのは刺身だ。
「毒があっても食べられるには訳がありますね」
「そうだな、本当にな」
「これだけ美味しいので」
「食われている」
毒があろうともだ。
「こちらの世界でもな」
「そういうことですね」
「大坂は河豚もよく食べるでござるが」
智も刺身を食べつつ言う。
「美食の街に相応しいでござるな」
「全くだな」
「いや、河豚を食べると他の魚は食べられないというでござるが」
「それだけの味だ」
英雄もこう言った。
「この魚はな」
「大昔から食べていたらしいっちゃ」
愛実は唐揚げを食べつつ述べた。
「貝塚から河豚の骨も出ているっちゃ」
「縄文時代からだな」
「かなり死んだそうだっちゃ」
河豚の毒にあたってだ。
「それでもっちゃな」
「食っていたな」
「それだけ美味しいということっちゃな」
「河豚は皮や内臓に毒がある」
英雄は冷静な顔で述べた。
「だから種類によるがな」
「そうしたところは食べないことっちゃ」
「よく肝が言われるが」
「他の部分もっちゃな」
「毒がありだ」
「若し食べたら死ぬっちゃ」
「だから河豚を食うにはな」
それにはだ。
「内臓を傷付けない様にして取ってな」
「身をよく洗うほうがいいっちゃ」
「食うべきだ」
「さもないとあたるっちゃ」
そして死んでしまうのだ、実際に調理を間違えてそうして毒にあたって死んだ者は実に多い。このことは事実だ。
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