黒魔術-Dark Majic- Part3/微熱と雪風を憎む者たち
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ファの笑みはフッと消えた。
「俺が生まれる少し前の時期から奴らが現れ始めて、気がつけばビーストを殺すための兵器開発に全てを擲っていて、まともに余裕を持った生活すら送ってなかったな。だがそれでも、人の命や夢を守ることに繋がるなら構わなかった。
だから愛梨を失った後、俺にビーストと戦える素質があると診断が下されたとき、俺は奴らと戦うことに迷わなかった。自分を殺す勢いで副隊長たちのしごきにも耐えて、任務でもビーストと腐るほど戦った。奴らを倒せば、以前の俺みたいな思いをする人を無くせると信じてな。
……結局、失敗したけどな」
目を伏せながら、その瞼の下に過去のトラウマが過るシュウ。
ビーストの脅威から人を守るために、何より近しい誰かを守るために研鑽を重ねて対ビースト兵器を開発していたのに、研究チームの仲間も、愛梨も失い、夢を抱くこともできなくなった。
どこか自嘲しているかのように語ったシュウに、テファの表情が曇ってしまう。それを見て、またやってしまったかとシュウは反省した。
「…済まない。それよりも舞踏会のことだな」
「シュウ兄、大丈夫だよ。お兄ちゃんたちが頑張ってるんだもん。絶対に開けるよ。もし反対してる人たちが何かしてきても、リシュがめ!って言ってやるんだから」
「リシュがここまでいうから、きっと大丈夫ね」
リシュもシュウのやる気に乗って、物怖じなんかしていないとアピールするようにシュウを励ました。それを見たテファは、くすりとほほ笑んでリシュの頭を撫でた。
シュウは笑みを交わしあう二人を見て、自身の中に二つの思惑が巡るのを感じた。
一つは、この笑顔を守らなければならないからこそ、以前のように戦いの道を行くべきか…もう一つは、平穏の中である以上、戦いを求めず平凡な日常に浸るべきか。
…だめだ。どうも以前と同じように、戦いへの姿勢が消え失せていない。やはりどうしても考えてしまうのだろう。
かつて愛梨を失って感じた時のように、彼女たちが今浮かべている笑顔を失うことへの恐怖を。
(…いや、今はよそう)
結局これまで何をしても、戦いを通して何かを満足して守れたことは一度もなかった。そんな自分のこれまでの己を省みないあり方を見て、テファは心を痛めている。これ以上は彼女を無暗に傷つけるだけでしかない。だったら今はこれでいい…これでいいんだと、シュウは胸の中で自分に言い聞かせた。
そしてまた、世界は変わる…
キュルケを謎の悪魔のような影から救出した翌日、シュウはアンリエッタたちの待つ生徒会室へ招かれ、昨日の件について話し合うことになった。
「悪魔の影のようなものが、キュルケさんを狙っていたのですね。なんと言うこと…」
教われたキュルケを思って、アンリエッタは辛そうに目を伏せる。怪我もないのは幸い
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