第6章:束の間の期間
第194話「合間の出来事・前」
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。椿と葵も同じくそちらを向いた。
そこには、小太りの男性がいた。
身に付けている管理局の紋章から、ティーダよりも上の階級なのがすぐ分かった。
「ッ、まずっ……!」
耳のいい椿が、その男性が言っている言葉をいち早く聞き取り、慌てる。
すなわち、ティアナには聞かせるべきではないと。耳を塞ごうとして……。
「―――犯罪者を管理外世界に逃しただけでなく、その犯罪者共々死ぬとは局員として有るまじき失態だ!まったく、こんな“無能”が部下だったとはな。嘆きたくなる」
間に合わず、ティアナの耳に“その言葉”が入った。
「……ぇ……」
“無能”。その言葉が、ティアナに聞こえてきた。
誰の事を言っているのか、理性が理解するのを拒もうとした。
だが、その前の言葉が、嫌でもティーダの事を指していると理解させられた。
「………」
心無い言葉に、ティアナはティーダが死んだ時以上のショックを受けた。
あの兄が、大好きな兄が、無能だと言われたのだ。
話に聞くエース・オブ・エースのような才能持ちにも負けないように、ずっと努力して、管理局員として正しくあろうとした兄を、侮辱された。
……その事実が、ティアナの心に深く突き刺さった。
「首都航空隊の魔導師であるならば、死んでも任務を遂行するのが当たり前だろう!だというのに、あの若造は……!」
ティーダに対する男の侮辱は続く。
それもティアナの耳に入り、悔しさで視界を涙で滲ませる。
男の傍に他の部下もいたが、どうやら逆らえないようで、口出し出来ていなかった。
「ッ……この……!!」
椿が怒りを爆発させようとした、その時。
……その椿よりも先に、葵がその男に近づいた。
「……ねー?」
「ん?」
笑顔で、自然体で、葵は男に声を掛けた。
「……もう一回言ってみなよ。誰が、“無能”だって?」
そして、次の瞬間。
笑顔のまま、放つ言葉に殺気が込められた。
「な、何だお前は!?」
「貴方の部下だったティーダ・ランスターの知り合いだよ。で、誰が“無能”なのかな?」
「(……なるほど。今の椿は神としての側面も持つ。だから……)」
葵が先に接触したのは、椿の怒りをこの場で出す訳にはいかなかったからだ。
葬儀自体は終わったとはいえ、未だに人が集まっている。
そんな場で椿の怒りが爆発すれば、文字通り雷が落ちて大変な事になってしまう。
その怒りを落ち着かせるために、先に葵が前に出たのだ。
「ふん。あの無能の知り合いか。あいつと同じく低能らしい面構えだ」
「うん?鏡でも見て言ってるのかな?あたしにはそう聞こえたけど」
「なっ……!?」
煽る。むしろ
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