黒魔術-Dark Majic- Part2/狙われた者たち
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ぐそばにあった孤児院へ招かれた。
「なんだい、そうならそうって早く言っといてくれよ。最近のテファから変に男に絡まれるってよく聞いてたから、てっきりその手の奴かと思ったよ」
孤児院内の居間で、向かい側のソファに座ったマチルダが、苦笑いを浮かべながら、紅茶をすすっていた。
「もう、姉さんったら…ごめんなさい先輩。マチルダ姉さんがご迷惑をかけました」
「いや、別に気にしていない…気持ちは理解できるから」
マチルダの隣に座って詫びを入れてきたテファに、シュウは気に留めてないと告げる。
彼は孤児院の屋内と外に広がる庭を見る。外からパッと見ると建物は保育園のようだが、建物の周りはきちんとした庭が備え付けられ、この建物の中も芸能人の持家のように広く環境も整っている。
「それにしても孤児院というには、かなり立派だな」
「私の両親が、世界各地から孤児を集めてここに引き取ってるんです。結構お金持ちなんですよ。でも両親は、自分たちのためだけに使わずに、恵まれない子供たちのために使うべきだって言って、この孤児院を開いたんです」
「あたしも、その孤児の一人でね。それがきっかけでここに引き取ってもらって、今じゃテファの姉兼この孤児院の先生ってわけさ」
立派な親を持っているんだな、とシュウは感心した。確かに世界中には、内戦や飢饉、親族からの虐待などで苦しむ子供たちがいる。そんな子供たちをテファの両親は引き取って育てているのか。
すると、シュウの耳に、外からギターの音色と共に歌声が聞こえてきた。見ると、中庭の方に子供たちが集まっており、その中央にはギターを片手に、木箱を椅子代わりに座る青年の姿が映った。
「あの人が気になりますか?」
「彼は?」
「アスカ・シン、って言うんだ。名前は聞いたことないかい?」
「アスカ…」
マチルダから聞いたその名前、どこか聞いたことがあるような気がした。うっすらと脳裏に、『アスカ』の名前を起点に奇妙なヴィジョンが過る。
グレーに赤のラインを走らせたスーツを着て、巨大な怪物と戦う…
不気味に金色の発光をする黒い怪物、傍らに立つ黒い悪魔の巨人、そして…自分を守るろうと、怪物や悪魔の巨人と対峙する、光の戦士の後ろ姿。
最後に見えたのは、暗黒の闇に染まった景色の中、悪魔の巨人から自分を守るために、青い姿となったその光の巨人によって、虚空の穴に向けて自分が投げ飛ばされ…。
(っ…またか…)
シュウは頭に過った奇妙なヴィジョン…いや妄想を払った。人を夜な夜な襲って食らうビーストの存在を知ったのはつい先日のこと。今一瞬過った『妄想』の中ではアスカがそれに似た怪物と戦っていた。ビーストの存在はその生態ゆえに秘匿され、ビーストとこれまで戦ってきたのは、その手の家系であるアンリエッタと、経緯は不明だが彼女と共にいるサイトやタバサだけだ。
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