Lv66 王子の決意
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ので」
「それは何よりだ……ゴホッ……ゴホッ……」
先程の会談の時より、咳き込む回数が若干増えた気がする。表情も心なしか覇気がない。陛下の容体が気になるところだ。
極秘会談の時は、無理して気丈に振舞っていたのかもしれない。
だが……俺はそれよりも、陛下から漂ってくる嫌な感じのモノが気掛かりであった。
(アズラムド陛下の身体から、魔の瘴気と似た波動が、わずかに感じられる……なぜだ……まさかとは思うが、魔物達に呪いのようなモノをかけられたのだろうか……)
俺がそんな事を考える中、アヴェル王子は訊ねた。
「父上……話というのは?」
アズラムド陛下は目を閉じ、静かに話し始めた。
「ヴァロムにはもう話したが……お前達にも話しておこう。此度の動乱で、イシュラナは魔物達が創り上げた偽りの女神という事がわかったわけだが……事はそう単純ではない。それはつまり、我がイシュマリア王家は……魔物達によって生みだされたという事になるからだ。恐らく……伝承にある、破壊の化身ラルゴとイシュマリアの戦いの伝説は、魔物達が仕組んだ偽りの叙事詩だったのだろう。そもそも、本当に戦いがあったのかどうかすらわからない。だが、問題は……それではない。今、問題なのは、我等の祖であるイシュマリアが、魔物達に加担したという疑惑だけが、この先付き纏うという事なのだ。先程の会談で、私はあえて、その事については触れなかったが……この事が何れ災いとなり、我等に降りかかるのは避けられまい。偽りの女神に命ぜられ、我等の祖先達は王となり、民達を惑わし続けてきた事になるのだからな。他言無用としたところで、漏れるモノは漏れるであろう。だが、なってしまったものは仕方がない。後は……イシュマリアの末裔たる我等が、どう後始末をつけるかだ……ゴホッゴホッ……」
「それは承知しております……父上」
アヴェル王子は肩を落とし、弱々しく返事をした。
陛下の言っていることは事実だから、こうなるのも無理はないだろう。
「そうか……ならば聞きたい。アヴェルよ……お主はどう考えている。お主は何れ、我が後を継ぎ、イシュマリアを治めてゆかなくてはならぬ身。今、我等がすべき事とはなんであろうか……それをお主に問いたい」
「わ……私には……わかりませぬ……此度の動乱で、あまりにも沢山の事を知り、そして翻弄される日々を過ごしてきました。次から次へと訪れる異変に……私はついていけない状態です。今、自分が何をすればよいのか……それが、わからぬのです……ウゥゥ」
アヴェル王子は声を絞り出すようにそう告げると、顔を両手で覆い、力なくガクリと項垂れた。
こんなに落胆する王子の姿を見るのは初めてであった。
恐らく、アシュレイアとの戦いの後も、ずっとそれについて悩んでいたんだろう。
アズラムド陛下は目尻を落とし、
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