ターン3 蕾の中のHERO
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女にも一応ここに来た理由は別にある。今頃は例の兜宅に潜入しているであろう部下の顔を……正確にはその鳥居に後で仕事放り出して遊んでいたことが発覚した場合に甘んじて受けることになる嫌味と愚痴の嵐を思い浮かべて小さく身震いする。
「よろしいんですか!ありがとうございます、是非お手柔らかにお願いします!」
「いや、今はちょっとなあ……」
「私からも頼むよ、もっとこの子には場数を踏ませてあげたいからね。それに糸巻の、ここに来た理由は察しが付くよ。明後日の話がしたいなら、まずこの子の相手をしてやっておくれ。それが、私からの条件さね」
「う……全部お見通しってわけか、わーったよ。八卦ちゃん、デュエルディスク持っといで。おねーさんが胸を貸したげるよ」
「はい!」
八卦が元気よく店の奥に駆け出し、デュエルディスクを装着して戻ってくるまでのわずかな間。その1瞬の隙に、彼女には聞こえないよう老人が小声で呟いた。
「兜建設か。ま、あとで出場者リストぐらいなら作ったげるよ」
「悪いな、爺さん」
裏稼業でなければ知りえないはずの、違法行為の詰め合わせである裏デュエルコロシアムの情報。これこそがこの寂れたカードショップがいまだ営業を続け、七宝寺自身の生活を成り立たせている真の理由だった。現役を退いてなお健在な彼の地獄耳は、どこから手に入れてくるのか常に最新の情報を掴んでいる。その理由や情報源について、彼女はいつも詮索しない。準備もなしにうかつに首を突っ込めば、この極めて重要性の高い情報網が絶たれかねないからだ。知らない幸福の存在を、彼女は確かに知っている。
「はあ、はあ……お、お待たせしました!デュエルしましょう、デュエル!」
「この狭い家の中で全力で走ってきたのかい?少し落ち着きな、アタシは逃げやしないからさ」
「す、すみません……ですが、もう大丈夫です!」
「はいはい、若いっていいねえ。それじゃあ……」
「「デュエル!」」
カードショップ奥のデュエルスペース。テニスコートの片面ほどもあるその広い空間は、現役時代の資産とこの一帯の安い地価のたまものか。先攻を譲ろうか、と提案しようとしたその時には、すでに自分が先攻であるという割り当てがなされていた。少し頭を掻き、仕方がないと息を吐く。
「それならアタシも、本気で相手してあげようかね。アタシのターン、まずはカードを2枚セット。そして牛頭鬼を召喚する」
牛頭鬼 攻1700
糸巻がまず繰り出したのは、筋肉隆々な牛の頭を持つ地獄の門番の片割れ。悪くない滑り出しだ、と心の中で密かに呟く。特に、このカードが初手に来たことは大きいと残る手札の1枚に改めて目を落とす。
「まずは牛頭鬼、こいつの効果を発動。1ターンに1度、デッキからアンデット族を1体墓地に送ること
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