ターン3 蕾の中のHERO
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ている時期だったのだろう。有識者に言わせれば、そういうことになっている。あわよくばデュエルモンスターズそのものが歴史の闇に葬られ、テロも自然消滅する……そんな甘い期待があったのかもしれない。しかしそれは叶わず、デュエルモンスターズは滅びなかった。そして挙句の果てが、唯一「BV」に対抗する手段としてのデュエルポリス結成、あの地獄の時期の迫害を黙認してきた元プロへの勧誘という名の手のひら返し。
糸巻自身は、デュエルポリスを激しく嫌悪する元プロの気持ちが痛いほどによく分かる。今更どの面下げてきた、彼女自身もそう吠えた記憶がある。それでも彼女は最終的にこの道を選んだし、それはたとえ記憶を消して100回人生をやり直そうとも変わらない選択だろうと思う。
「あ、あの、私何か失礼なこと言ってしまいましたか……?」
「いいや、八卦ちゃん。アンタは悪くないよ。それはそうと、八卦ちゃんはデュエルやるのかい?」
ここまで口に出した時点で、自分の声がひどく空虚なものに聞こえた。露骨な話題逸らしだ、と心の中で自嘲する。それは、自分自身が過去の記憶から目を逸らしたがっていることの表れでもある。そしてそんな思いは露知らず、穢れを知らない純粋な目であっさりこの話題に食いついた少女を前にまた胸が痛む。
「私ですか?はい!ルールもおじいちゃんに教えてもらって、今は修行中なんです!」
「へえ、爺さん随分面倒見がいいじゃないか」
「つくづく似合わないだろう?だが、この子はなかなか特別でね。まだまだ荒いが、この子には天性のセンスがある。なかなか面白い逸材になりそうだよ」
「お、おじいちゃん……」
もじもじと居心地悪そうに照れる少女を、まじまじと見つめる。人間的にはどうにも胡散臭い印象がぬぐえないが、この七宝寺という男は現役時代から人を見る目に関しては一目置かれていた。暗黒の時代に廃刊となってしまったとある雑誌では、毎年プロ入りするデュエリストが出るたびにご意見番として今後の予想を語る専用コーナーまで作られ、その結果次第でスポンサーの付き方や裏賭博の倍率まで影響を及ぼしたほどだ。
だが糸巻の目には、目の前の少女がそこまで褒めちぎるほどの天才には映らなかった。確かにハキハキとした明るい好印象の少女ではあるが、一目見ただけで伝わるような強者の気配は感じない。
そんな半信半疑の表情を目ざとく見て、老人がふと思いついたとばかりの軽い調子で声を上げる。
「おお、そうだ。糸巻の、なんなら今からこの子の相手を頼めないかい?」
「え、アタシが?この子の?」
「論より証拠というじゃないか。それに、この私仕込みのデュエリストだ。腕のなまった元プロ風情に、そう簡単に勝たせやしないよ」
「そうは言うがなあ」
普段の彼女なら即座にOKを出したであろう誘いだが、彼
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