特異点冬木「Fate/zero」
アバンタイトルだよ士郎くん!
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なおかつ生存していた言峰のサーヴァントだった時点で事情は明らかだ。
ただし、ここが平行世界線ではなかったら、という但し書きが付くが……今はその可能性を考慮する段階ではない。俺は凛の父がどうせうっかりしてたんだろと偏見で決めつけつつ、とりあえずの方針を練る。
「一応聞いておくが、気づかれなかっただろうな?」
「オレがそんなヘマするかっての。下手なアサシンより周囲に溶けこむのは巧いぜ? ルーンもあるしな」
「ほう、そうか。前から思ってたがルーン便利だな。汎用性的に凄く使いたい」
「マスターにゃ無理だ。才能が無ぇ」
「知ってる」
言い合いつつロマニに財布を放って投げた。大まかに算段を立て、戦略を思い付いたのだ。
ロマニに渡した財布には、俺の個人的な金が入っている。それを掴み取ったロマニに俺は告げた。
「ロマニ。ちょっと別行動しよう」
「うわぁ……またぞろ悪巧みしてる顔だね」
「ん? そういうの、分かるのか?」
「分かるよ。友達だし」
苦笑してロマニは了解してくれた。「今の僕は士郎くんのサーヴァントだし、ご命令とあらば否とは言えないね」、と。
なんとも気恥ずかしいことを平気な顔で言う男である。俺も釣られて苦笑しつつ、マシュに言った。
「マシュ。ロマニと一緒にいてくれ」
「私も別行動なんですか?」
「ああ。ロマニと親娘で行ってこい。たまにはいいだろ、こういうのも」
「っ!? せ、先輩! もうっ!」
背中を押してロマニにマシュを預ける。親娘と言われたのが恥ずかしいのか、照れているのか、マシュはむくれつつも素直にロマニについた。
ロマニは穏やかにマシュを受け入れつつ、問いかけてくる。
「で、これからどう動くつもりなのかな? 我がマスターは」
「ああ、うん。――ちょっと聖杯戦争に混ざろうと思ってな。ランサーのサーヴァント、そのマスターとして」
その言葉の意味を察したのか、ロマニは苦笑を深める。
「うっわぁ。やっぱえげつないね、士郎くんはさ」
正規のマスターに扮して聖杯戦争をやりながら、外部にデミ・サーヴァントを二人控え、更にカルデアからのバックアップもある男が、マスターとして参加するなんて外道も良いところである。
ロマニはすぐにその戦術の真価を察して、なぜ別行動なのかを理解し、暫しの遊興を楽しむことにした。
冬木の聖杯戦争の仕組みは知悉している。聖杯を完成させるのは不味い、というのは常識的な判断だ。
だが、だからこそ完成させる。その上で破壊する。完成直後の聖杯は、この世全ての悪を出産させるのに僅かなインターバルがあるだろう。何せ聖杯を握った者の願望を叶える体で出てこなければならないからだ。願望器という在り方の弊害ゆえに。
完成して間
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