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人理を守れ、エミヤさん!
円卓の衛宮
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して計上するべきだ」
「ふむ」

 ふたりの意見を聞き、加害者、実行犯、被害者の記述を消してそれぞれに『お前が悪い』、『情状酌量の余地あり』、『俺は悪くぬぇ!』と書き込んだ。
 ぴくぴくと口端を震えさせ弓兵は男を睨むも、男はまるで痛痒を覚えずどこ吹く風。口笛を吹きながらわざとらしく議題1終了と記入。そのまま流れるようにして議題2の『カルデア内での取り決め』を記して男は弓兵――英霊エミヤに視線を向ける。
 彼は率直に告げた。ずるずると蟠りを後まで引き摺るほどガキではないし、そもそも彼は英霊エミヤを嫌っている訳でもない。いや寧ろこの世で最もリスペクトする英雄のトップ5以内にランクインしているほどだ。なのでなんら負の感情もなく彼に言える。

「――ぶっちゃけ冬木のあれは本当に俺は悪くないので謝らないから」

 心底嫌そうにエミヤは顔を歪めた。
 彼がこうまで露骨に、ほぼ無条件に嫌悪感を出すのは、世界広しといえども衛宮に対してだけだろう。それ以外には大抵情状を酌量して、相応しい態度を算出しているはずである。
 エミヤは男からの言葉をばっさりと切り捨てた。彼にとっても、そんなものは無価値でしかないのだ。

「端から貴様に謝られたいと思っておらんわ、戯け」

 詰まる所、あの時は敵対していたから戦ったというだけでしかない。勝敗の行方も、順当と言えば順当なものだった。
 エミヤはあの時、聖杯の泥によって黒化し、思考能力が低下していた。持ち前の心眼が曇っていたのだ。そうなれば本来の実力を発揮出来るはずもなく、アサシンという鬼札を持っていた衛宮に敗北したのは自然だった。

 衛宮はエミヤを嫌っておらず、エミヤも衛宮を既に己とは別人だと割り切っている。その時点で両者に怨恨の類いは一切ない。ただ、エミヤの方は色々と複雑なものを抱えている訳であるが。

「ならいい。恨みっこなし、そこは割り切ろうぜ。お互いガキじゃないんだしな」
「……そうだな。だがそれはそれとして、オレとて聖人君子ではない。こちらに言いたい事があるのは貴様も了解しているだろう」

 衛宮は頷く。エミヤが言いたい事は解っていた。貴様に敗けたままなのは我慢がならん、再戦を要求する――という事だろう。
 然もあらんとエミヤは頷いた。彼は自分との対決の不毛さを弁えているが、かといってあんな(・・・)負け方をしてそのままにしておけるほど大人でもなかった。

「自傷は趣味ではないが聞いておこう。あの時、もしオレが黒化していなかった場合、貴様はオレを倒せたか?」
「ああ」

 衛宮は即答した。彼はエミヤの手札を知っている。そしてエミヤは切嗣の存在を知らなかった。こんな好条件で戦って、どうやれば負けるというのか。しかも、こちらにはマシュもいたのである。勝算は充分すぎるほど
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