第二章
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彼の大妖魔を封じている訳ではないのだ。
「お前たちが案ずるのも無理からぬこと。故に、ルーク、スランジェ、お前たちに一つの呪文を教える。」
「呪文…?」
「そうだ。しかし、これは禁忌の呪文。今回以外は、決して行使してはならん。」
そう言ったマルクアーンに、聞いていたシュトゥフが難を示した。
「お前…まさかアレを教える訳ではあるまいな?」
「無論、アレだ。それしか手立てがないからのぅ。」
「しかし、アレは禁忌どころか…人間の尊厳さえ…」
「分かっておる!だが、今こうしている時でさえ、ルー達の力はこの結界の維持で消耗しておるのだ!議論している暇はない!」
珍しくマルクアーンが声を荒げたため、シュトゥフも腹を決めた。それだけ今の状況は切羽詰まっているということなのである。
それを聞いていたルークもスランジェも、主であるシュトゥフ同様、その呪文に命運を賭けることにしたのであった。
マルクアーンが二人へと伝えた呪文…それは、精神移転の魔術であった。
この魔術は、ある者の精神を別の者へと移し替えるものであるが、成功例は二例しかない。一つは先の大戦中でのことで、もう一つはあの"シェオール"の例である。どちらも死者の肉体を使用しており、今回も前例に擬えて行うしかないと考えていた。
それを聞いたルークもスランジェも最初は表情を強張らせていたが、腹を括って実行の段取りを話し始めた。
先ず王城に向かい、瓦礫の中にあろうグールを見つけしだい呪文の詠唱を始め、近くに残されているであろう遺体にグールの精神を移し替える。その後、二人がその遺体に結界を張って動きを封じている内に、マルクアーンとシュトゥフとで魔晶石かそれに準ずる物を探し出して破壊する…と言うことで話を纏めた。
四人はそこから王城…と言うよりは王城が建っていた場所へと向かったが、街中も破壊し尽くされており、多くの瓦礫と人間であったものの残骸がちらばっていた。
ふと足元を見れば、恐らくは頭部の一部だったであろう破片や腕、瓦礫を退けて進めば足や内臓の一部が転がっている…まるで先の大戦さながらであった。
「またこの様な日が来ようとは…。」
その光景に、マルクアーンは在りし日を思い出して呟く。
そんなマルクアーンに、シュトゥフは小さく溜め息をついて言った。
「シヴィル、感傷に浸っている間はないじゃろう?」
「その通りだ。だがな…どうしても思い出してしまう…。」
「言っても詮無いことじゃ。ならばさっさと行って、成すべきことを成そうぞ。」
「そうだな…。」
マルクアーンはそれ以上何も言わず、皆は黙したまま歩みを進めた。
二時間程経って、四人は漸く王城の敷地内へと入ることが出来た。そこは街並みと同じく瓦礫と化していたが、目的の妖魔を見つけるには然して時を要さなかった。
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