68部分:第六話 暴かれた時その十二
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第六話 暴かれた時その十二
「あの、岩清水」
「何かな」
「あんた何がしたいのよ」
その不安な面持ちで彼を見ての言葉である。
「本当に」
「別に」
岩清水は温和そのものの仮面を被って述べた。
「何もないよ」
「何も?」
「うん、何もね」
口ではこう言う。仮面を被ったまま。
「そうなんだ。君達仲いいんだね」
「え、ええ」
「そうよ」
「そうに決まってるだろ」
三人も必死に言い繕う。
「同じラクロス部だし」
「それだったらよ」
「仲悪い筈ないだろ」
「そうだね。ラクロス部だよね」
岩清水は今度はこのポイントを指摘した。
「同じね」
「そうよ、同じラクロス部よ」
今度は如月が応えた。
「だから別に。そういうことは」
「そういえば。椎葉さんに起こったことだけれど」
岩清水の今度の言葉はふと気付いた感じであった。やはりこれもわかっていて出している。彼は周到に計算して話しているのである。
「あれって同じラクロス部の娘じゃないとできないのかもね」
「えっ・・・・・・」
皐月と同じ言葉だった。だがそれは四人の心に突き刺さった。
「それはどうなのかな」
「さ、さあね」
「どうかしらね」
「わからないわよね」
「ちょっとね」
四人はまた焦りながら言葉を返した。
「まあ。誰が犯人かっていったらね」
「私達知らないし」
「知ってればいいんだけれど」
「知っていたらね」
岩清水は隠したままである。
「また教えてよ」
「わかったわ」
如月が頷いて返した。
「それじゃあね」
「そうしてよ。それじゃあだけれど」
「それじゃあ?」
「僕は僕で動くから」
岩清水はこう言って四人の前から去ろうとする。
「そういうことでね。何かあったら教えてね」
「うん、それじゃあ」
「頑張ってね」
四人は焦りを隠せないまま岩清水を見送った。だが四人の心は彼の言葉を受けてだ。その不安と狼狽をさらに深めさせ強くさせていた。
それでだ。如月はその場で言うのだった。
「ねえ」
「何だよ」
長月も不安に満ちた顔で返した。
「一体」
「まさかと思うけれど。ばれないよね」
「大丈夫だよ」
今言ったのはその長月である。
「それは」
「大丈夫なの?」
「本当に?」
「だってよ。誰も見てないだろ?」
長月は文月と霜月の言葉に一応返しはした。
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