第三章
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「これどっかの左翼かぶれの高校生が授業中に大学ノートに書いたのか?」
「もうそんな出来だな」
当時はまだインターネット上でウェブ小説なぞなかったので何処かの小説サイトでも下の下以下と言うのもおこがましいとは言われなかった。
「これは酷いな」
「もう読めたものじゃなかったな」
「俺読んでいて本投げ捨てたくなったよ」
「俺もだよ」
「俺実際に本読んでて気付いたら投げかけていたよ」
兎角酷い出来だったのだ、もうその出来の酷さでネット上で話題にさえなっていた。それでだった。
ネット上でもその評価は極めて低くあちこちの掲示板でも酷評と言うのもおこがましい感想が書き込まれていった、そして酷かった作品を挙げろという掲示板でも出される程だった。
それでだ、ファン達はこうも言った。
「あの作家終わったな」
「これが一人の作家の終焉なんだな」
「作家が終わる瞬間見られてよかったよ」
「酷いなんてものじゃなかった」
「俺ファン止めた」
「作品はもう読まないな」
「読まなくても死なないしな」
完全に駄目だという評価だった、そしてだった。
続刊は何時出るかわからなくなっていた、だが彼等の多くは冷めきった声で言うだけだった。
「あの出来じゃいいよ」
「もう続刊なんか出なくていいさ」
「どうせ次もああなんだ」
「もっと悪いかも知れないしな」
こう言っていいとした、そして続刊は無期限延期とまで言われて十年以上出なくて今に至っているが。
ファン達、かつてはそうだった彼等は今も冷めきった声そして顔もそうなっていてそれで言うばかりであった。
「ああ、まだ出ないんだな」
「どうせ読まないからいいさ」
「あんなシリーズ終わっても終わらなくてもどうでもいいよ」
「どうせあんな風にしかならないんだ」
「読んでも何の意味もないよ」
「不愉快な思いするだけだ」
「面白くないし金を棄てるだけだよ」
彼等はもう続刊を待ち望むことはなくなった、それが他のシリーズにも及んでいた。実際作者は他のシリーズでも社会評論を書いていたからそうなるのは当然の帰結だった。
ファンはめっきり減りそのシリーズの無期限延期と言われてもそれならそれでいいとなって十数年が過ぎた、それで今に至るがそれでもどうでもいいという感じだった、待ち望むものはまるでと言っていいまでになくなっていた、何時出ることになるかがわからなくなっていてももうそうなってしまっていた。終わらなくてもどうでもいいシリーズとなり果てていた。作者がそのことを知っているのか知らないのかわからないがそれが結末だった。
無期限延期 完
2018・9・5
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