第二章
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だがそれでも発売日が待ち遠しいのは確かだった、とにかく四年振りの新刊だ。ファンとしては一刻も読みたいということが本音だった。
それで本屋でもネットでも予約する者が相次いだ、そうして発売日から早速多くのファン達が読んだのだが。
その本を読んでだ、まずだった。
彼等はその目を顰めさせた、それは瞬く間に顔全体に及んだ。そうなってから読みつつ言った。
「何だこれは」
「どうなってるんだ」
思わず言ってだ、そしてだった。
最後まで読んでだ、彼等はサークルでもネットでも話した。
「おい、あのシリーズの新刊何だ」
「あれ小説か?」
「社会批評ばかりだぞ」
「それも的外れな」
「日本の悪口ばかり書いてるぞ」
「あれは何処のタブロイド紙なんだ?」
そこまで酷い社会評論で作品全体が埋め尽くされていたのだ。
「スポーツでも何でも日本は駄目だとかな」
「登場人物に言わせまくって」
「アメリカとイラクの戦争も書いてるけれどな」
「あれ本題じゃないだろ」
「何で社会評論ばかりなんだ」
「言っていることも出鱈目ばかりだがそればかりで一冊書いてるぞ」
「作者冗談抜きで電波になったのか?」
「あの電波は想像を遥かに越えてたぞ」
所謂斜め上の域に達していたというのだ。
「しかもストーリーも酷いな」
「急に幕府とか出てな」
「主人公達の敵の筈だったキャラが変に味方になってな」
「それで祭り上げられて」
「その政策も無茶苦茶だが」
「何か酷い展開だな」
「破天荒なんてものじゃないぞ」
そうしたストーリーの展開ではなかったというのだ。
「あれはもう出鱈目だろ」
「社会評論以上に酷いぞ」
「二十世紀の終わりの作品世界が急に二十一世紀になってるぞ」
「作中で言われてることもな」
「一巻で急に数年経ったのか?」
「いや、そんな感じじゃないぞ」
社会評論以上にストーリーの破綻が酷かったのだ。
「変なキャラは出て来るしな」
「漢字撲滅運動?」
「何か保守派批判みたいだけれどな」
「日本の保守派はむしろ漢字擁護だっただろ」
「福田恒存がそうだったな」
シェークスピアの翻訳等で有名な英文学者だ、その学識の深さと知性は戦後日本の知識人達の中でも特筆すべきものであろう。
「そんなことも知らないでこんなの書いたのか?」
「社会評論にもそう言えるけれどな」
「キャラも酷いな」
「言ってることも酷いが」
「タイムスリップしたみたいなストーリーも」
「もう何もかもが滅茶苦茶だな」
「というかこれ小説かよ」
こうした意見まで出て来た。
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