第三章
[8]前話
彼はあることに気付いた、それで居酒屋で飲んでいる時に親父にカウンターから話した。
「本当の友達ってあれかな」
「何かわかったんですか?」
「うん、お互いが生きているうちはわからないのかな」
こう言うのだった。
「ひょっとして」
「といいますと」
「いや、片方の人が死ぬよ」
彼のことを思いつつ言うのだった。
「生きている方はその人が死んだことを悲しいと思う、それがね」
「友達ですか」
「何でもない人のことを死んで残念に思わないよね」
こう親父に言うのだった。
「そうだよね」
「それはそうですね」
親父も彼のその言葉に頷いた。
「何でもない人なんか」
「死んでも何も思わないね」
「はい、大事な人と思うから」
「死んだら残念に思うんだよ」
「その通りですね」
「それで死んだ人も自分の死に悲しんでいる人を見て」
その死んだ方のことも話すのだった。
「その人が自分の友達だったってわかるのかな」
「死んで魂だけになった時にですか」
「そうなのかな」
「独特の考えですね、ですが」
それでもとだ、親父も否定せずに話した。
「そうかも知れないですね」
「最近そう考える様になったよ」
何故そう考える様になったのかは言わなかった、友人のことを思い出してそれを言うには憚れたのだ。
「僕はね」
「深いですね。ですが」
「そうかな、やっぱり」
「そうかも知れないですね、自分が友達と思っていても相手はって本当にありますしね」
「それもあるしね」
「人間お互いが生きているうちは友達ってわからないんですね」
「そうも思う様になったよ、僕が死んだら」
その時もだ、真壁は考えて述べた。
「その時は誰か悲しんだりしてくれたら嬉しいかな」
「その人が友達だからですね」
「そうだよ。友達って実はそんなものなのかな」
またこう言った、そうしてだった。
真壁は焼酎を飲みつつ焼き鳥も楽しんだ、その二つの組み合わせは実に美味かった。だが彼のことを思いつつまた悲しく残念に思った。彼のことを友達だったのだと噛み締めながら。
本当の友人 完
2018・8・5
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