第一章
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天狗の作者
鞍馬天狗を観てだ、川北白馬は母方の祖父で時代劇に詳しい力動寿福に対して明るい笑顔でこう言った。
「昔の作品だけれど」
「今観ても面白いだろ」
「凄くね」
時代劇チャンネルを観つつ答えた、もう鞍馬天狗は終わりテレビではこれから何を放送していくかを紹介していた。
「痛快でね」
「娯楽番組でな」
「単調なお話も」
新選組が悪役で鞍馬天狗は志士達を助け彼等と戦っている、役どころが実にはっきりとしていてわかりやすい。
「いいね」
「そうだろ、しかしな」
「しかし?」
「作者さんはどうも違ったみたいだな」
寿福はまだ高校生の孫に話した、今白馬は母の法事で祖父の家つまり母の実家に泊まっていてそこで夜に話をしているのだ。
「あの人はな」
「作者さん?」
「大佛次郎だ。知っているか」
「いや、はじめて聞いたよ」
作者の名前はとだ、白馬は寿福に素直に答えた。
「というか鞍馬天狗を観たのも今がはじめてだしさ」
「名前は聞いていてもか」
「うち誰も時代劇観ないから」
次郎は面長で剣道部の部活のせいかすっきりとなっている顔で言った、いつも部活で汗をかいていて身体つきはすっきりしていて髪の毛は黒く短い。背は一七四程だ。ラフなシャツと膝までの半ズボンという恰好は実に高校生らしい。足は素足である。
「父ちゃんも母ちゃんも姉ちゃんも」
「皆か」
「ドラマは現代ものでさ、あと特撮だよ」
「特撮を観てもか」
「時代劇は観ないよ。というか今さ」
「ああ、時代劇はもうテレビじゃな」
「昔はやってたんだろ」
「毎日七時か八時から何処かのチャンネルでやっていたな」
寿福はかつてのことを話した。
「今のバラエティ番組ばかりの時間帯にな」
「あの時間帯の番組ってどれも面白くないから」
白馬は祖父に顔を顰めさせて言った、そして祖父が無言で差し出した氷を入れた梅酒のコップを受け取った。祖父もそれを飲んでいる。つまみは枝豆だ。
「家じゃ誰も観ないよ」
「野球もやっていたがな」
「ネットで観られるから」
野球もというのだ。
「別にいいよ」
「そうか、もうテレビじゃ観ないか」
「巨人のばっかりじゃ観ないよ、うち全員巨人嫌いだし」
家族全員がというのだ。
「それ祖父ちゃんもだろ」
「当たり前だ、ここは何処だ」
「広島だよ」
すぐにだ、孫息子は祖父に答えた。
「広島の呉だよ」
「それだとわかるだろ」
「母ちゃんも鯉女だしな、姉ちゃんも」
「わしもだ、勿論婆さんもだ」
白馬の祖母もというのだ。
「カープだぞ」
「そうだよな」
「御前と礼次郎君はソフトバンクだがな」
「そりゃ福岡に住んでるからさ」
当然だとだ、白馬は祖父に答えた。
「それだ
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