第三章
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「流石にです」
「もうご高齢なので」
「この度の戦にはです」
「参加されない方がいいです」
「そうもいかないでしょう」
だがイオラオスは敵の大軍を見てこう返した。
「敵は多い、ですから」
「一人でも多くの兵が必要ですか」
「この度は」
「そう言われますか」
「はい、そしてあの大軍は歩兵ばかり多いので」
それでともだ、イオラオスは敵軍の状況を見て看破した。
「戦車で攻めるといいです」
「戦車といいますと」
「まさか」
「イオラオス殿が」
「はい、私が戦車を動かし」
そうしてというのだ。
「敵と戦いそのうえで、です」
「倒す」
「そうされるというのですか」
「そうさせてもらいます、私が攻めている間に皆さんもです」
共に戦う彼等にも言うのだった。
「攻めて下さい、そうして勝ちましょう」
「そのお歳でもですか」
「大丈夫ですか」
「戦えますか」
「そして勝てますか」
「はい、敵は確かに多いですがそれでも歩兵が多く戦車には弱く」
そしてと言うのだった。
「またヒュドラーやケルベロスに比べると遥かに」
「戦いやすい」
「そう言われますか」
「今の我々ではヒュドラーやケルベロスには勝てません」
極めて冷静に述べた言葉だった。
「ですがあの大軍には勝てます」
「では」
「これより」
「私が戦車で攻撃を仕掛けます」
それに乗って攻めるというのだ。
「ですから皆さんも」
「それでは」
「攻めさせてもらいます」
「是非」
「その様にお願いします」
こう言ってだった、そのうえで。
イオラオスは僅か一人で戦車に乗り込みそれを誰もが驚くまでに巧みに乗りこなし敵を攻め敵を完全に翻弄した。それを見た彼の軍勢の者達もだった。
今こそと見てだ、全軍で攻撃にかかった。これによって彼等は大軍を相手にした戦いに勝った。
誰もが一人で戦車に乗って勇敢に戦い自分達を勝利に導いたイオラオスを讃えた、だが彼は笑ってこう言うだけだった。
「あれ位なら私だけでも」
「勝てる」
「そう言われますか」
「はい、これまでの戦のことを思えば」
ヘラクレスに従い戦ってきた数多くのそのことを思えばというのだ。
「何でもありません」
「そうですか」
「あれだけの大軍を相手にしてもですか」
「何でもありません」
微笑んでこう言うだけだった、そして勝利の後の宴でも彼は静かであり目立たなかった。それでだった。
彼はこの戦いの後でもヘラクレス程目立つことはなく武勲はギリシア中に広まってもその目立たない容姿から誰が彼かと言われることもなかった、それでだった。
彼は死ぬまで目立たず死んでからは多くの者に忘れられた、しかし彼を知る者には伝えられその名は残っている。ギリシア最大の英雄の一
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