曙光、されど暗雲晴れず
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。もし今後、戦いを決めにいく時、或いは圧倒的多数の敵に囲まれた時、必要なら躊躇わず固有結界を使うんだ。タイミングは士郎くんが判断して良い」
「了解だ、司令官」
苦しそうに言うロマニに、しかし俺はあくまで軽く応じた。戸惑ったようにこちらに視線を戻してきた優男に、俺はなるべく陽気に笑いかける。
「どうした、気に病む必要はないぞ、ロマニ。お前は当たり前の事を命令しただけだ。ロマニは正しい、全く以て。反論の余地などどこにもない」
「……」
「俺は最後のマスターだった。だが今はネロがいる。つまり、俺だけが人類の命運を担っているわけではない。最悪俺を切り捨て、ネロを生かすべき状況も今後出てくるかもしれないんだ。あらゆる可能性を想定しておくのは必要なことだ」
「……そうだとしても、ボクは、そんな命令はしたくないんだよ」
絞り出すような声音だった。静かに激する瞳は、しかし気弱そうな、情けない表情に隠されている。
マシュを見下ろし、ロマニはぽつりと言った。
「キミがカルデアに来たばかりの事、覚えてるかい?」
「ああ」
「マシュが何も知らないで……いや、知識ではなく、何も体験が積めてない状態でいた事に、キミはとても怒った。一発殴られたの、今でもはっきり覚えてるよ」
「……おい、その話は済んだだろう。後、お前も殴り返してきたろう」
「殴り返せと言ったのはキミだ」
殴られた左頬を擦るロマニは、なぜか嬉しそうだった。
「それから、キミはボクやマリーに、マシュに情操教育と称して色んなレクリエーションをさせた。歌ったり踊ったり……楽しかったよ。マリーもマシュの事を怖がってたけど、最後らへんはヤケクソになって楽しんでたと思う。ボクは……不躾だけど、士郎くんのことを友人だと、思ってる」
「……」
「……マシュが今みたいに活気づいて、普通の女の子になれたのはキミのお蔭なんだ。ボクはキミにとても感謝しているんだよ、士郎くん。だから、」
「……ロマニ。それ以上は言うな」
苦笑して言葉を遮る。
彼が自分に友情を感じてくれているのは素直に嬉しい。
だがそれとこれとは話は別だ。俺だって死ぬ気はないし死にたくないが、公的には優先順位というものがある。
私的には幾らでも私情を垂れ流していいが、ロマニや俺の立場を思えばそれさえも自制すべきなのだ。
なぜなら今のカルデアは、ロマニという存在と、俺の実績によって保っているようなもの。せめてカルデアのスタッフらがメンタル面で持ち直すまで、あらゆる場面で泰然としていなければならない。
「感謝しているのは俺も同じなんだよ、ロマニ」
「え……?」
「カルデアに雇われたお蔭で人理焼却から免れた。命の恩人なんだ、お前達は。そしてこんな俺が、強制的とはいえ正義の味方じみた偉業に
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