第三章
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「おう、どうしたんだよ」
「いやね、彼氏がね」
「どうせ結婚しようとか言ってもだな」
「それがどうにもっていう返事で」
「そうか、ひょっとしたらな」
「ひょっとしたら?」
「ご主人の結婚への障害はねえな」
五徳猫はこのことから述べた。
「そうだよな」
「別にね」
「そうだな、だったらな」
「だったら?」
「相手にあるんだよ」
「彼になの」
「何かな、さもないとお互い三十だ」
アラサーそのものの年齢である。
「もうそろそろな」
「結婚したい年齢よね、私がそうだし」
「女もそうでな」
それでと言うのだった。
「男だってそうだよ」
「じゃあ彼にも」
「何か言えない事情があるんだろ」
「それは何かしら」
「それを聴いてみな、相手をよく知らねえとな」
「よく知ってるつもりよ」
付き合って何年にもなる、お互いの長所も短所もわかっていてそのうえで好きでいるのだ。だから結婚も言うのだ。
「そこはね」
「それはその人個人の事情だろ」
「周りもあるっていうのね」
「結婚はあれだ、個人と個人なのは事実でもな」
それでもと言うのだった。
「家と家のでもあるだろ」
「古い考えね」
「古くても今もそれはあるんだよ」
五徳猫は飲んで赤くなった顔で応える麻紀に告げた。
「どうしてもな」
「それじゃあ」
「おう、その辺り何処となく聞いてな」
「そうしてなのね」
「結婚を言ってみなよ」
「それじゃあね」
麻紀は五徳猫の言葉に頷いた、そうしてだった。
彼に何処となく彼の家のことを聞いた、するとだった。
「そうか、お祖母さんがか」
「介護が必要らしいのよ」
「そうか、それでご主人はどうなんだよ」
「別に介護もね」
「苦にならねえんだな」
「これでも高校の時ひいお祖母ちゃんが寝たきりで」
それでというのだ。
「私とお母さんとお姉ちゃんで面倒見てたから」
「大丈夫なんだな」
「何か寝たきりらしいけれど」
それでもと言うのだった。
「経験があるから、それにお仕事を辞めるにしても」
「介護に専念してか」
「私はいいから」
「そうか、じゃあな」
「そのことをなのね」
「相手に言ったな」
その彼氏にというのだ。
「そうしてだよ」
「結婚を言えばいいのね」
「ああ、けれどよかったな」
五徳猫はテーブルの上で後ろ足だけで立ってそこに座っている飼い主に述べた。
「家がヤクザ屋さんとかいうのでなくてな」
「若しそうだったら」
「結婚は無理だろ」
「そうなるかしら」
「家がヤクザ屋さんっていうのはな」
これだけでとだ、諭吉は自分の経験から話した。
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