偽伝、無限の剣製 (後)
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に立つ」
――霊基と身体が合一する。
どこか甘かった機構の歯車が、がっちりと噛み合った。
――嗚呼、本当に。なんて人達なんだろう。
少女は想う。
青い騎士王の鮮烈な輝きを。黒い騎士王の凄絶な煌めきを。優美に咲く赤薔薇の皇帝、神話の時代の伝説の狩人、一つの神話で最強を誇る蒼い槍兵。そして、
「――其は全ての疵、全ての怨恨を癒す我らが故郷……」
無色の世界に、色彩を齎してくれた、大切なひと。
まだ、人理が焼却されていなかった頃。
ドクターと、所長と、一緒に歌ってくれた。一緒に美味しいものを作って、一緒に食べてくれた。
外の世界の事を沢山話してくれた。
苦手だったけど、楽しい運動を一緒にしてくれた。
壮絶に戦う彼の背中は、等身大の生への渇望だった。
――守りたい。
自分なんかがそう想うのが厚かましいぐらいあのひとは強いけど。それでも、助けになりたい、どこまでも一緒に在りたい、これからの未来を一緒に見たい。
その想いが、少女を走らせた。
一生懸命に駆ける。遠い、遠い背中に追い付きたくて。あのひとの見ている景色がどんなものなのか、知りたくて。
絶望が見える。
未来を無くそうとする、とても怖い、魔神。
瞬く間に樹界を復活させ、全てを呑み込もうとしていた。
だけど、大丈夫。
雪花の楯を駆けながら構えて、裡から導かれるままに唱えて。
「顕現せよ」
顕すのは、想い。
形にするのは、それだけでいい。
素直に見つめよう。迷いなく見据えよう。
四方から取り囲むように迫る暗い樹界を、決してあのひとには届かせない。
「『いまは遙か』ッッ――」
頑張って、力を振り絞る。
驚いて振り向くあのひとに、楯の少女は全力で微笑んだ。
「『理想の城』!」
――そうして顕現した白亜の城壁は、あらゆる不浄を祓い、あらゆる穢れを落とし、あらゆる脅威を打ち払う鉄壁の守りと化した。
ここに絶大なる質量は無力に堕す。
城壁の外から押し潰さんとするヘドロの樹木は悉く弾かれ、白亜の城に取り込まれた魔神は一切の穢れを放てない。腐り落ちていた樹槍は純潔の領域に赤みを取り戻し、人の心なき魔神の瞳に、微かに光が戻った。
アタランテが気合いと共に『火』の灯る大剣を魔神に突き刺した。
『火』が魔神に吸収される。本来あるべき器へと。
そして、あたかも自分から刃を受けるように魔神は止まった。
オルタが黒き聖剣で袈裟に叩き切る。
ネロが大剣を思い切り振り抜いた。
そして、
剥き出しとなった聖
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