偽伝、無限の剣製 (後)
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力尽き消え去って。英雄も殆ど消えかけていながら、なおも豪快に咆哮していた。
「我が朋友コナルの名に懸けて!」
ルーンを象った刺繍入りの外套を靡かせ、
白銀の籠手が包む逞しい腕が担ぐのは。
巨大な、
城であった。
「――勝利の栄冠は、諦めねぇ奴の頭上にこそ輝くのさ!」
高らかに謳う益荒男のスケールに、誰しもが圧倒される。
「ダンドークの城を枕に逝きな、『圧し潰す死獣の褥』!」
字面としても滑稽な形容である。投擲された城が、再生し尽くす直前の魔神を、いとも容易く押し潰したのだ。
軽やかに着地した蒼い槍兵は、獰猛に牙を剥いて、消えかけの体で礼を示した。
「マスター! 報告するぜ。世界の一端、確かに撃破して来た。今のはちょっとしたサプライズって奴さ」
「ランサー……お前、」
「んだぁ? だらしねぇ、男ならしゃんと立ってろ」
膝をついたままの俺に、最強のランサーたるクー・フーリンは呆れたように手を差し伸べ、無理矢理にでも立たせてくれた。
脚が消えている。体も、ほぼ全てが光の粒子となって消えていた。だがそれでも、ランサーは言う。肩を叩き、活性のルーンを俺に刻みながら。
真剣に、男が、男に、告げるのだ。
「テメェはオレに言ったな? 二つの世界の片割れをオレに任せる、テメェらはもう一つの方を始末するってな」
「……」
「オレは勝ったぜ。なら、今度はそっちの番だ。オレの認めたマスターなら、きっちり勝ちきってみせろや」
ドン、と胸の中心に拳を当てられる。
消えていくクー・フーリンは、やれやれ、これでオレの仕事は一旦終わりだなと言って消滅した。
まるで、俺が勝つのは当たり前だと言うような、余りにも爽やかで、後腐れのない退場。
拳の触れた胸が、熱い。
負けてたまるか、なんて分かりやすい気力が湧いた。
元より勝利への想いは無限、溢れるものも勝利への渇望のみ。俺は、自身を潰す城を膨大な量の樹木で押し退けた魔神に向かう。
そうだ。まだだ、まだやれる、やれるとも。剣化する肉体はまだ動く。なら行こう。勝ちに行こう。休んでろと言ったのに勝手に逝ったアルトリアに文句を言わなきゃならない。俺にはまだ『先』が必要なんだ。まだ生きていたいのだ。
状況は振り出しに戻った。だが、負ける気がしない。声もなく、俺は駆け出す。何も持たず、拳だけを握って、衝動的に一直線に走り出した。
オルタが前を行く。その前をアタランテが馳せる。傍らのネロが高揚するままに何かを歌っていた。
嗚呼――負ける気がしない。その俺の心に呼応するように、声が響いた。
「真名、開帳。わたしは災厄の席
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