偽伝、無限の剣製 (後)
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有結界の能力を全て導入する。干将を捨て、右手を天に掲げて汚泥の樹界、その降誕を遮らんと薄紅の花弁を剣の丘から取り出した。
「熾天覆う――七つの円環ッッッ!!」
崩落する天を支える。
全身の筋肉が軋んだ。魔術回路がひしゃげる感覚に魂が破裂しそうだった。
片膝をつく。体が圧力に潰れそうに、否、実際に潰れていく。断絶する筋繊維、ぶちぶちと手足の先から引き千切られていく実感に気が狂いそうだ。
しかし、見えた。
天に集めた汚泥の樹木。支えられるのはほんの数秒。天と地を水平に別ち、ヘドロの樹界を落下させた魔神は今、完全に無防備だった。
オルタが聖剣を振るう。こちらの狙いを悟った魔神が咄嗟に防御体勢を取ろうとする。ぐずぐずと爛れた黒体、無惨に崩れる樹槍でどう防ぐ? 決めに掛かる刹那、オルタの放たんとする卑王鉄槌に魔神が嘲笑を浮かべた。
悪寒がした。そんな程度の魔力ではどうにもならぬと余裕を見せている。強がり? いやそんな事をする意味は――もはや思考に費やせる時などあろうはずもなく、敗北を予感しながらもオルタの剣に託すしかなかった。
だが。
騎士達の王の参陣せし戦に、敗北など有り得ない。
金色の星の息吹が敗着の結末を吹き飛ばす。何もかもを圧殺せんとしていたヘドロの樹界が突如薙ぎ払われた。
其は輝ける命の奔流――固有結界を侵食していた泥を圧し流し、圧倒的な魔力の光が固有結界を崩壊させる。獲物を追い詰める為に空間を維持していた魔神は、魔力の氾濫を纏めて受け止める事となり、期せずして魔神はその霊基の四分の一を損壊させてしまう。
星の燐光は主君のソラを取り戻し、誇らしげに散った。
――貴方に勝利を。
俺の、俺達の勝利を確信して消えたアルトリアの気配に、俺は気を取られ。
樹界を一掃し、あまつさえ魔神の半身を両断した聖剣はカルデアに勝機を齎した。
「っぅ……!」
だが動けない。体はとっくに限界だった。ぐつぐつと煮え滾る闘志は無限、しかし体の方がついてこない。声すら出なかった。
今、魔神は喪った半身を再生するために停止している。この隙を逃す訳にはいかないのに、瞬時に駆け出したオルタは間に合わない。アタランテの脚でも届かない。魔神の再生速度は常軌を逸する。折角見えた光明を掴めぬまま死にゆくしかないというのか。
いや。
「っ……? ……ふ、はは、ははは、」
笑い声が漏れた。
なんてこった、こんな時に、いやこんな時だからこそなのか。
予期せぬ気配に、轟いた雄叫びに、絶望に硬直していた空気は打ち砕かれた。
穴だらけの結界の外。
激しい馬蹄が迫り来る。
遥か高く跳躍して一騎の英雄――愛馬は
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