兎と騎士と獣
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
無数のビルに囲まれた所で、四糸乃は目を覚ました。ひんやりとした空気が頬を撫で、続けて全身の毛が粟立つ様な視線を感じた。
「・・・ぁ」
四糸乃は怯えながらもその視線の方に顔を向けた。そして自然と口から、
「・・・ひぅ」
そんな声が漏れた。それは仕方ないことかもしれない。なぜなら、そこに、
「やっほ〜、 〈ハーミット〉♪」
全身を近接特化型CRユニット〈モルドレッド〉で包んだノルディックブロンドの髪色をしたリンレイがこちらに嘲笑を浮かべて立っていたのだから。
「・・・どう・・して」
か細い声で疑問を口にする四糸乃に、リンレイは口の端をさらに吊り上がらせ、対精霊レーザーブレード<クラレント>を引き抜いた。
瞬間、ひんやりとしていた空気が熱を帯びたかのように熱くなる。 まるで鉄板の上に裸で寝転がっているかのような熱さに四糸乃は苦しそうな表情を浮かべた。無理もない、彼女にとって熱さは天敵だ。
「あは、苦しそうだね? ハーミット」
「・・・・っ!?」
近くで不意に聞こえたリンレイの声に、四糸乃は息を詰まらせ、地面を蹴って後ろへ下がった。その数秒後、四糸乃が先程までいた地面が割れた。
「ちっ。 外したか」
リンレイが〈クラレント〉を横に払って、舌打ちする。そんな彼女の殺意の一撃に四糸乃は逃走を始める。
「逃がすかってんの!」
リンレイは無線機でこの場に向かっているASTに援護するように合図を送り、機械鎧の手甲中心で紅く光る宝石に触れた。瞬間、〈クラレント〉が銃形態へと変化した。
「−−追え」
その言葉と共に引き金が引かれ、幾つもの紅い光弾が放たれた。それぞれが致死の力を持つ、必殺の一撃。霊装がなければ、四糸乃を一〇〇回殺しても釣りが出るであろう、悪意と殺意の化身。
「・・・!・・・!」
四糸乃は、錯乱気味に空を舞いながら、声にならない叫びを上げた。
動悸が激しくなって、
お腹が痛くなって、
目がぐるぐると回る。
誰かに悪意を、殺意を向けられていることが、四糸乃には許容しきれなかったのだ。
いつもは−−違う。 いつもなら、四糸乃の左手には『よしのん』がいてくれる。強くて頼りになる『よしのん』がいたから、平気だった。みんなを傷つけずにいられた。
でも、今は−−
「きゃ・・・・!」
四糸乃は、左肩に凄まじい衝撃を感じ、短い悲鳴を上げながら地面に落ちていった。霊装を容易く貫いた一撃。その一撃に四糸乃の心が恐怖に支配されていく。
ガチガチと歯が鳴って、
ガタガタと足が震えて、
グラグラと視界が揺れる。
もうどうしようもないくらいに、頭の中がグシャグシャになる。
「ぅ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ