偽伝、無限の剣製 (中)
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ず。そして背を向けたまま、アルトリアはマシュの裡に言葉を向けた。
「純潔、王道、大いに結構。ですがギャラハッド、見守るだけでは駄目でしょう。時には導く事をしなければ。今のマシュは貴方の妹のようなもの、これを導かなければ――父上のようになってしまいますよ?」
「ッッッ??」
茶目っ気を見せて笑ったアルトリアに、マシュの霊基が強烈に反応した。
思わず飛び上がりそうになる。マシュは驚いて、聖剣を構えたアルトリアを見る。
導く、か……。
心の中で、アルトリアは呟く。
かつて人の夢を束ねる覇王に糾弾された事がある。お前は導く事をしなかった、と。
なるほどそれは正しい。アルトリアはそれを認めた。ならば、今、導く。過去出来なかったそれを、現在で果たす。
姿形は違えど、臣下である。騎士である。ならばこれを導いてこその王。あの覇王とは決して相容れないが、正しいと認めた部分だけは素直に聞いてやろうではないか。
「マシュ、見ていなさい。これが『役に立つ』という事です」
解放された聖剣が、アルトリアから魔力を吸出し、目映い黄金の煌めきを放つ。
切っ先が睨むのは、今まさにカルデアを押し潰さんとする汚泥の波濤。人間の奮闘をキキキキと嘲笑う魔神の暗黒。
死に物狂いで薄紅の七枚楯で凌ぐ男と、捨て身で反転した極光を解き放たんとする黒騎士。青い騎士王は堂々と剣を担ぐ。そして、最後に言った。
「ですが、貴女は『役に立つ』だけで満足してはいけません。彼を――シロウを『守る』。それは貴女にしか出来ないことだ」
「アルトリアさん……」
参る、と謳う常勝の王。
見守る臣下の目を背に受けて、約束された勝利の栄光を主君に届けよう。
己の存在を維持する魔力を全て注ぎ込み、粒子となって消えていきながら、アルトリアは渾身の力を込めて必勝の輝きを解放する。
其の真名は。
「約束された――
――勝利の剣!」
絶命の窮地にて、自身らを救い出した黄金の光。
男は唇を噛み締め、オルタは忌々しげに先を越されてしまったかと吐き捨てた。
マシュは、その王を知る。本当の意味で感じる。
そっか、と呟いた少女の目には、衒いのない純潔の炎が燃え盛っていた。
成すべき事を知って。楯の少女は、出撃する。
密かに潜む獣の気配を、誰も感じないまま。
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