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カルディア侯爵の挑戦状
カルディア侯爵の気遣い

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私は母様に背中を押され、だんだんと勇気が湧いてきた。だから余計に不安になった。この人を超してこの国の頂点に立たなければならないのだと…。母様が先に名前を呼ばれ開けられた扉から優雅に出て行く。
「環・コーテリア様です。」
和と洋の名前が入り混じる。環とは、王の名称で必ず入れなければならない。ルーティア、ルーシェの名前は隠さなければならないのは知っていたが隠した時の不安感がこれほどとは思わなかった。これからは自分一人が3人の顔を背負うことになる。決してヘマをすることは出来ない緊張感とまだ誰の体だとはっきりしていないのに自分が表に出ることになった罪悪感を胸に開けられた扉からゆっくりとおしとやかに出て行く。そこには貴婦人や騎士、貴族たちがわんさかいる。魔法を使えるものが貴族になるものの、騎士の方との体格差が圧倒的だ。
私が出て予め用意されている椅子の前に移動するまで約10秒、その10秒は練習よりも二倍近く長く感じられた。会場が静まり返る。自然と向けられる視線が痛い。ここにいつもいてくれた二人はいない。いつものありがたみを改めて思い知らされた。第一印象はこの第一声で決まる。改めて背筋、顎の角度
その他諸々注意点を頭の中で浮かべ今回話すことも整理する。
〔今回は、お集まりいただきありがとうございます。この時間を有意義なものに…〕
一礼をして席に着く。私の頑張りはあたかも当たり前のごとく拍手が起こった。ゆっくりと流れる音楽に合わせて皆は踊りだす。そんな中、私には貴族たちが挨拶をしに来る。わざわざ回りくどく結婚相手を探ってくる。そんなたわいもない話の返事をする時にも、誰かに常見られていると意識を持って姿勢を正す。
こつっこつっ
また一人ステージに上がってくる貴族。そんな中、上がってきたのはカルディア侯爵だ。私は少しホッとしながらもピリピリと肌で感じる視線を浴び続け再び緊張が走る。
(この度は、体調がよろしいようでなによりです。)
全員が同じ言葉をわざと言っているのかと思うくらい聞いた言葉。
〔ええ。ありがとう。〕
いつもよりも硬い笑みを浮かべる。カルディア侯爵もそれに気づいているのか眉をひそめながら笑っている。そんな二人を見ている人たちはいつも間にかダンスを踊る人もすくなる。その様子にいち早く気付いたカルディア侯爵は、私を誘う。
(どうでしょう。僕と一緒に踊ってはいただけませんか?)
わざと崩したように言うカルディア侯爵に感謝の言葉を述べ差し出された手を取った。
ざわめく会場の中ゆっくりとカルディア侯爵にエスコートされ階段を降りる。
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