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彼願白書
逆さ磔の悪魔
カリキュレイト・ラース
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号を出したものの、ほどなく追撃により爆散轟沈したものと思われる。該当海域は波高く、また夜間の捜索という悪条件もあり、要救助者は確認できなかった。これで通してくれ。」

壬生森が何処かに電話をしている。
わざわざイリジウムを持ち出している辺り、どうやら相手とのコンタクトは非公式なものらしい。

「わかった。最新のコンバットシステムについてはLMLIに話を回しておく。なに?費用はこっち持ちだと?買える機会があるだけ貴重なシロモノだ。予算案に補正を加えるからそれでやりくりしろ。」

イリジウムの通話を切り、壬生森は空を見上げる。
壬生森はやや不機嫌そうだが、壬生森の電話の向こう側は基本的に不機嫌どころか憤慨させられているのだ。
自分が不機嫌にさせられるくらい、たまにはあるだろう。

「どこを使ったのか知りませんが、口封じさせましたね?」

「あまり、好き好んでやりたいことではないのだけどね。彼等があくまでも、こちらに敵対するというのならば、仕方のないことだ。」

「して、その答えはあれですか。」

「うん、どうやら龍驤はオーダーをキッチリこなしたらしい。」

ばさん、ばさん、と猛禽の羽ばたきにも似たような音と共に空から降りてきた骸の竜は、脚に掴んでいた金髪の少女を甲板に放ると、また踵を返して飛び去っていく。

「う、うぇぇぇぇ……」

甲板に転がされた少女はうつ伏せのまま気持ち悪そうに呻く。
まぁ、アレが快適な空路だったとは思い難いが、一番安全で最速な手段だったのは確かなのだ。
それについては割り切ってもらおう。

「あー、君、君。水が、必要かね?」

青ざめた顔のまま起き上がってきた少女の前にミネラルウォーターのペットボトルを差し出すと、小さく礼を言ってからおずおずと受け取り、慌てて飲んではむせて、熊野が背中を擦っている。

「sorry、貴方が私のadmiral……ですか?」

「いや、私は壬生森。君の提督のところに君を届ける役目を担っている者だ。」

「ミブ……モリ……?ふぁあああっ!う、撃たないで!いやぁああああっ!」

一瞬考え込んだあと、金髪の少女は尻餅をついたままとは思えない速さで後退りしていく。

「提督、何をやらかしたんですの?」

「さぁ?何をやらかしたことになってるんだろうね?」

壬生森ははて?とすっとぼけるのを尻目に熊野がすたすたと近付いて、右手を差し出す。

「彼の何を聞かされたかは知りませんが、彼は見ての通り、駆逐艦娘の蹴りひとつで病室送りになりそうなひ弱なおじさんですわ。」

「おじさんはやめなさい。」

「貴女のお名前を確認したいの。カサブランカ級19番艦、ガンビア・ベイでいいのかしら?」

「い、Yes……Gambier Bay
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