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彼願白書
逆さ磔の悪魔
カリキュレイト・ラース
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這々の体で波間に逃げ出した先には、ボートすら出す間もなく、何人かが水面に浮いていた。
その大半は甲板やブリッジから外に投げ出されて助かったようだ。
助かった、と言えるかは怪しいが。

「ビィーンッ、って変な音がしたんだ!クソッ!ダンケルクかよ、ここは!」

「チクショウ!ジェリコのラッパなんて曾祖父さんの頃の遺物だぞ!なんでこんなとこに今更になって飛んできやがった!」

怪我人も多い。
太平洋のど真ん中、深海の連中もそこら辺にうようよいる。
間の悪いことにこの辺りで嵐も発生しそうな時期だ。
救助が来るとは、考えにくい。
どうやら、我々は既に狐の尾を踏んでいたらしい。
我々のもとに送られてきたのは、ガンビアベイ受領という任務を達成出来る者だと思っていたが、そうではなかった。
あの赤い外套の少女は、かつての力はもう持ち合わせていないロートルと聞いていた。
実際はそんなものではなく、我々を一人で殲滅出来る、そういう怪物だったのだ。
護衛に配置していた艦娘も、上空からサイレンが鳴り響く中、次々に一人ずつ爆散していく。
これほど一方的な戦い、いや、これはただの虐殺だ。
こんなものを見たことは、かつてない。
我々の内、一人として生かして帰すつもりがないのだ。
誰も指揮を執る者がいない艦娘達は、ひたすら狼狽えながら回避行動と散発的な対空砲火を放つばかり。
艦娘達が対空砲を撃とうとする度に足が止まり、拙い対空砲火をすり抜けたスツーカが逆さ落としに爆弾を投げ落として悠々と去っていく。

『この程度では話にもならない』

と、現実を突き付けられているような感覚。

『“深海の世紀”はこの程度では土俵にすら上がれない』

と、まざまざと見せ付けられている惨状。

ハママツでの、彼との別れ際の言葉を今更思い返す。

『そもそも、普通に“ネームレベル”と戦うことすら、アンタ達には難しいだろう。ましてや単なる撃破じゃなくてサンプル確保まで欲張るとは……私達がアイツ等をただ狩り殺すだけでもどれだけの細い橋を渡っているか、アンタ達はわかってない。』

これほどの圧倒的な戦力を有しておきながら、そこまで言わしめたと言うのか。

『“リバースド・ナイン”撃破の妨害になると判断したら即座に沈める。アンタ達はただ、尻拭いの代金だけ差し出せ。』

あの言葉は、我々への侮りから出たものだと思っていた。
実際はこうだ。
我々の手は“リバースド・ナイン”どころか、“深海の世紀”の艦娘一人にすら届いていなかった。

また一度、ジェリコのラッパが鳴る。
クソ、あと何度この音を聞けばいい?




「そろそろ日が落ちる。救助は困難だろう。あぁ、そうだ。『母艦不明の深海機による空襲』でレイクエリーは大破したため救難信
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